「自分で遺言書を書いておきたいが、書き方を間違えると無効になると聞いて不安」——そうした方に向いているのが、自分で手書きする自筆証書遺言です。費用をかけずに作成でき、いつでも書き直せる手軽さが特徴です。

一方で自筆証書遺言は書式の要件を一つでも欠くと無効になりやすいという弱点があり、「日付が特定できない」「押印がない」「夫婦連名で書いた」といった理由で効力が認められないケースが後を絶ちません。これを補うために、2020年7月から法務局における自筆証書遺言書保管制度が始まりました。手数料1件3,900円で法務局が遺言書を預かり、紛失や改ざんを防ぎ、家庭裁判所の検認も不要になる制度です。本記事では、自筆証書遺言の正しい書き方と法務局保管制度の使い方を、民法の条文をもとに整理します。

💡 この記事でわかること
・自筆証書・公正証書・秘密証書の3方式の違い
・自筆証書遺言の書き方(民法968条の要件・財産目録のPC作成可)
・無効になりやすい落とし穴とその回避方法
・法務局保管制度の手順・手数料3,900円・検認不要のメリット
・不動産の書き方・遺留分・遺言執行者
☐ 費用をかけずに自分で遺言書を書きたい
☐ せっかく書いた遺言を無効にしたくない
☐ 遺言書の紛失・改ざんが心配
☐ 不動産を特定の相続人に相続させたい

目次

第1章 遺言書の3つの種類|自筆・公正証書・秘密証書
第2章 自筆証書遺言の書き方|民法968条の要件と財産目録
第3章 無効になる落とし穴|日付・押印・訂正・連名
第4章 法務局保管制度|手順・手数料3,900円・検認不要
第5章 不動産の書き方・遺留分・遺言執行者
第6章 よくある質問(Q&A)
まとめ

🚨 重要な注意
本記事は2026年7月時点の民法・関係法令等をもとにした一般的な情報提供です。要件や手数料・手続は法改正等で変わる可能性があり、個別の遺言が有効かどうかの判断は事案により異なります。作成にあたっては司法書士・弁護士等の専門家や法務局にご確認ください

第1章 遺言書の3つの種類|自筆・公正証書・秘密証書

🎯 この章で解説すること
・普通方式の遺言3種類の概要
・費用・証人・検認の要否と選び方

日常的に利用される「普通方式」の遺言は、自筆証書遺言(本人が自書し押印する手軽な方式)、公正証書遺言(公証人が作成し証人2名が立ち会う確実な方式)、秘密証書遺言(内容を秘密にしたまま存在だけを証明する方式)の3種類です(民法967条)。それぞれ作成方法・費用・信頼性が異なります。

項目 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
作成者 遺言者本人が自書 公証人が作成 本人作成(署名等)
費用 原則かからない 財産額に応じ数万円〜 公証人手数料 定額
証人 不要 2名必要 2名必要
保管場所 自宅/法務局(保管制度) 公証役場(原本) 自分で保管
家裁の検認 原則必要(保管制度で不要) 不要 必要
無効リスク やや高い 低い やや高い
📖 出典:民法第967条(普通の方式による遺言の種類)
遺言は、自筆証書・公正証書・秘密証書によってしなければならないとされ、この3種類が普通方式として定められています。費用を抑えつつ確実性も高めたい場合は、自筆証書遺言を作成し法務局の保管制度を利用する組み合わせが選択肢になります。
✅ 本章のまとめ
☑ 普通方式の遺言は自筆証書・公正証書・秘密証書の3種類
☑ 公正証書は確実だが費用と証人2名が必要
☑ 自筆証書+法務局保管なら費用を抑えつつ検認も不要にできる

第2章 自筆証書遺言の書き方|民法968条の要件と財産目録

🎯 この章で解説すること
・自筆証書遺言の4つの必須要件
・財産目録はPC作成・コピー添付が可能

自筆証書遺言のルールは民法第968条に定められています。1項が求める要件は次の4点です。①全文を自書(本文はワープロ・代筆不可)、②日付を自書(作成年月日を特定できる形で)、③氏名を自書、④押印(実印が望ましいが認印でも可と解されています)。

📖 出典:民法第968条1項
「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と規定されています。

注意したいのは、本文をパソコンで作成した自筆証書遺言は原則として無効という点です。手が不自由で自書できない場合は、公証人が作成する公正証書遺言など他の方式を検討してください。

財産目録はパソコン作成・コピー添付が可能

2019年1月13日施行の改正民法により、添付する財産目録は自書が不要になりました。財産一覧をパソコンで作成したり、預貯金通帳のコピーや不動産の登記事項証明書のコピーを添付したりできます(民法968条2項)。ただし目録の各ページには署名し、押印する必要があり、両面印刷なら両面に署名押印します。

📖 出典:民法第968条2項
自筆証書に一体のものとして相続財産の目録を添付する場合、その目録は自書することを要しないとされ、この場合は各ページに署名押印することが求められます。

なお本文では、財産を誰に渡すかを「〇〇を△△に相続させる」と明確に書きます。「任せる」「よろしく頼む」では法的に特定できず、トラブルの原因になります。

✅ 本章のまとめ
☑ 本文は全文・日付・氏名の自書+押印が必須(民法968条1項)
☑ 財産目録はPC作成・コピー添付が可能。ただし各ページに署名押印
☑ 誰に何を渡すかは「相続させる」等で明確に書く
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第3章 無効になる落とし穴|日付・押印・訂正・連名

🎯 この章で解説すること
・実務でよくある無効・トラブルの原因
・加除訂正の正しい方法と共同遺言の禁止

日付が特定できない「令和〇年〇月吉日」のように作成日を特定できない書き方は、日付の記載として無効と判断されるおそれがあります。「令和8年7月14日」のように具体的な年月日を書きましょう。

押印がない・自書していない:氏名を書いても押印を忘れると無効です。本文をパソコンで作成した、家族に代筆してもらった場合も自書要件を満たさず無効になります。

加除訂正の方式違反:修正には民法968条3項の厳格な方式が必要です。変更場所を指示し、変更した旨を付記して署名し、変更箇所に押印します。この方式を守らない訂正は効力を生じません。

📖 出典:民法第968条3項
「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない」とされています。
⚠️ 注意
訂正の方式は複雑でミスが起こりやすいため、書き損じた場合は無理に訂正せず、最初から書き直すほうが安全です。

夫婦連名(共同遺言の禁止):夫婦で1通を連名で作ることは共同遺言の禁止に該当し無効です。民法975条は2人以上が同一の証書で遺言をすることを禁じています。ご夫婦それぞれが別々の用紙に作成してください。財産の特定が不十分な場合も、相続手続の段階で解釈が分かれ争いにつながることがあります。

📖 出典:民法第975条(共同遺言の禁止)
「遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない」と定められています。
✅ 本章のまとめ
☑ 「〇月吉日」など日付が特定できない書き方は無効のおそれ
☑ 訂正は968条3項の方式厳守。不安なら最初から書き直す
☑ 夫婦連名は共同遺言の禁止(975条)で無効。別々に作成する

第4章 法務局保管制度|手順・手数料3,900円・検認不要

🎯 この章で解説すること
・法務局保管制度の概要と根拠法
・保管申請の手順・手数料3,900円・検認不要のメリット

自筆証書遺言の「紛失・改ざん・発見されないリスク」を補うのが法務局における自筆証書遺言書保管制度です。「法務局における遺言書の保管等に関する法律」に基づき2020年7月10日に施行され、作成した自筆証書遺言を遺言書保管所として指定された法務局が保管する仕組みです。

メリットは3点です。①紛失・改ざん・隠匿を防げる(原本を法務局が保管)、②外形的な形式チェックを受けられる(日付や署名押印の有無など。内容の有効性まで保証するものではありません)、③家庭裁判所の検認が不要になる。通常、自筆証書遺言は相続開始後に検認が必要ですが、保管制度を利用すれば検認が不要となり、相続人の手続負担を軽減できます。

📖 出典:法務局における遺言書の保管等に関する法律(2020年7月10日施行)
遺言書保管所に保管されている遺言書については、家庭裁判所の検認の規定を適用しないとされ、検認が不要となります。

申請の流れは、①法務省の様式に沿って遺言書を作成、②申請書を作成、③管轄の法務局(住所地・本籍地または所有不動産の所在地)を予約、④本人が出向いて申請、という順序です。申請は必ず遺言者本人が出向く必要があり代理できません。手数料は1件3,900円(収入印紙)で、公正証書遺言が数万円以上かかることが多いのと比べ費用を抑えられます。

相続開始後、相続人等は法務局で遺言書情報証明書の交付を受け、これをもとに相続登記や預貯金の解約を進めます。相続人の一人が交付を受けるなどした場合、法務局から他の相続人へ保管の通知がされる仕組みもあります。

⚠️ 注意
手数料や様式・手続の細部は、法改正や運用見直しで変わる可能性があります。申請前に法務省・法務局の最新案内をご確認ください。形式チェックは方式面の確認であり、内容の有効性を保証するものではありません。
✅ 本章のまとめ
☑ 2020年7月10日施行。手数料は1件3,900円
☑ 紛失・改ざん防止、外形的な形式チェック、検認不要が主なメリット
☑ 申請は本人が法務局へ出向く(代理不可・要予約)
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第5章 不動産の書き方・遺留分・遺言執行者

🎯 この章で解説すること
・不動産は登記事項証明書どおりに特定する
・遺留分への配慮と遺言執行者の指定

不動産は「所在・地番・家屋番号」で特定する

遺言で不動産を渡す場合、普段使う住所(住居表示)だけでは登記上の不動産を正確に特定できないことがあります。遺言書には登記事項証明書(登記簿)どおりの表示を用いるのが原則で、土地は所在・地番・地目・地積、建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積で特定します。登記事項証明書のコピーを財産目録として添付すれば書き間違いを防げます。そのうえで「この不動産を〇〇に相続させる」旨を明記します(相続人以外へは「遺贈する」)。

⚠️ 注意
「自宅を長男に」といったあいまいな書き方では、どの土地・建物か、共有持分はどうするかが特定できず、相続登記の場面で手続が滞ることがあります。登記事項証明書を取り寄せ、そのとおりに記載してください。

遺留分と遺言執行者

遺言では原則自由に財産の渡し方を決められますが、一定の相続人には遺留分という最低限の取り分が保障されています(民法1042条以降)。遺留分が認められるのは配偶者・子(およびその代襲者)・直系尊属で、兄弟姉妹にはありません。「全財産を長男に」という遺言でも、他の相続人は侵害された範囲で遺留分侵害額請求を行えるため、配分は遺留分に配慮し、付言事項で理由を書き添えると争いを避けやすくなります。

📖 出典:民法第1042条ほか(遺留分)
兄弟姉妹以外の相続人(配偶者・子・直系尊属)に遺留分が認められ、割合は相続人の構成により異なります。

また、遺言の内容を実現するため遺言執行者を指定しておくことが推奨されます。執行者は名義変更や預貯金の解約などを遺言に沿って進める役割を担い、相続人が多い場合でも手続を円滑に進めやすくなります。信頼できる家族のほか、司法書士・弁護士などの専門家を指定することもできます。

✅ 本章のまとめ
☑ 不動産は登記事項証明書どおりに所在・地番・家屋番号で特定
☑ 配偶者・子・直系尊属には遺留分がある。配分は遺留分に配慮
☑ 遺言執行者を指定すると手続を円滑に進めやすい

第6章 よくある質問(Q&A)

🎯 この章で解説すること
・自筆証書遺言と保管制度に関するよくある疑問

Q1. パソコンで書いた遺言書は使えますか?
A. 本文をパソコンで作成した自筆証書遺言は原則無効で、本文は全文を自書する必要があります(民法968条1項)。財産目録はパソコン作成・コピー添付が認められます(同条2項、各ページに署名押印)。

Q2. 日付を「令和8年7月吉日」と書いてしまいました。
A. 「吉日」のように作成日を特定できない書き方は、日付の記載として無効と判断されるおそれがあります。年月日を具体的に書き直しましょう。

Q3. 夫婦で一緒に1通の遺言書を書いてもよいですか?
A. 2人以上が同一の証書で遺言をすることは共同遺言の禁止(民法975条)に該当し無効です。ご夫婦それぞれが別々の用紙に作成してください。

Q4. 保管制度を使えば相続後の手続はすべて不要になりますか?
A. 家庭裁判所の検認は不要になりますが、相続登記や預貯金の解約は別途必要です。なお法務局は形式面を確認するのみで、内容が有効か・遺留分を侵害していないかまでは保証しないため、内容面は専門家にご相談ください。

Q5. 自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選ぶべきですか?
A. 費用を抑え手軽に作りたい方は自筆証書+法務局保管、確実性を最優先したい・財産や相続関係が複雑な方は公正証書遺言が向く傾向があります。不動産が含まれる場合は専門家に相談して選ぶと安心です。

✅ 本章のまとめ
☑ 本文の自書・日付の特定・単独作成が有効性の要
☑ 法務局の保管は形式面の確認であり内容の有効性保証ではない
☑ 方式選びは財産・相続関係の複雑さで判断

まとめ|正しく書き、法務局で守る

自筆証書遺言は費用をかけず手軽に作成できる一方、全文の自書・日付の特定・押印・単独作成といった要件を欠くと無効になりやすい方式です。2019年の改正で財産目録のパソコン作成・コピー添付が認められ、2020年に法務局保管制度が始まったことで、より使いやすく確実性の高いものになりました。①民法968条の要件を守る、②「令和〇月吉日」や夫婦連名の落とし穴を避ける、③不動産は登記事項証明書どおりに特定する、④法務局保管制度で紛失・改ざんを防ぎ検認の負担も軽くする——この4点が要点です。

💡 本記事の要点(3つ)
① 自筆証書遺言は本文の全文自書・日付・氏名・押印が必須(民法968条)。財産目録はPC可(要署名押印)
② 日付の特定不能・押印もれ・訂正方式違反・夫婦連名(共同遺言の禁止・975条)が主な無効原因
③ 法務局保管制度(2020年7月施行・手数料3,900円)で紛失や改ざんを防ぎ、家庭裁判所の検認も不要になる

ヘリテージリンクでは、東京・埼玉エリアを中心に相続不動産に関するご相談を承っています。遺言に不動産が含まれる場合の物件の特定や評価、相続後の売却・活用まで、司法書士・税理士等の専門家と連携してサポートします。「不動産の書き方が分からない」といったお悩みは、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

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🚨 免責事項
本記事は2026年7月時点の民法および法務局における遺言書の保管等に関する法律等の公表情報に基づく一般的な情報提供であり、個別の法務・税務アドバイスではありません。要件や保管制度の手数料・手続は法改正等により変わる可能性があり、個別の遺言が有効かどうかの判断は事案により異なります。作成にあたっては司法書士・弁護士等の専門家や法務局にご確認ください。

運営:ヘリテージリンク株式会社|東京・埼玉エリアの相続不動産・空き家の査定・売却・管理

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