身内が亡くなると、深い悲しみのなかで、休む間もなくさまざまな手続きに追われることになります。「何から手をつければいいのか分からない」「気づいたら期限を過ぎていた、ということにならないか不安だ」——こうしたお悩みは、相続を初めて経験される多くの方に共通するものです。相続の手続きには、7日以内の死亡届から、10ヶ月以内の相続税申告まで、それぞれに期限が定められたものが数多くあります。
相続手続きの全体像をひとことでいえば、「死亡届に始まり、財産の名義変更で終わる、期限つきの一連の流れ」です。この流れを最初に俯瞰しておくと、いま何をすべきか、次に何が待っているのかが見通せるようになり、慌てずに一つずつ進めていくことができます。逆に、全体像を知らないまま目の前の手続きだけを追っていると、相続放棄の3ヶ月や相続税申告の10ヶ月といった重要な期限を見落としてしまうおそれがあります。
本記事では、身内が亡くなった直後から相続税の申告・不動産の名義変更(相続登記)までの流れを、期限つきの「完全ロードマップ」として時系列で整理します。7日以内の死亡届、3ヶ月以内の相続放棄、4ヶ月以内の準確定申告、10ヶ月以内の相続税申告、そして2024年4月に義務化された3年以内の相続登記まで、やるべきことを順を追って解説していきます。
・死亡直後から相続税申告までの手続きを、期限つきの時系列で俯瞰できる
・7日・14日・3ヶ月・4ヶ月・10ヶ月・3年という主要な期限の意味
・相続人の確定(戸籍収集)と相続財産の調査という、すべての土台となる作業
・相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)の考え方
・2024年4月に義務化された相続登記(不動産の名義変更)の要点
☐ 身内が亡くなり、これから相続手続きを始める方
☐ 相続で「いつまでに、何をすべきか」の全体像をつかみたい方
☐ 相続税がかかるのか、まず目安を知っておきたい方
☐ 相続した不動産の名義変更(相続登記)を控えている方
☐ 将来に備えて、相続の流れをあらかじめ理解しておきたい方
目次
第1章 相続手続きの全体像(期限別ロードマップ)
第2章 死亡直後〜2週間にやること(死亡届・各種届出)
第3章 相続人と相続財産の確定(戸籍・財産調査)
第4章 3ヶ月の相続放棄・4ヶ月の準確定申告
第5章 10ヶ月の相続税申告(基礎控除・遺産分割)
第6章 相続登記(3年義務化)と不動産の扱い
第7章 よくある質問(Q&A)
まとめ
本記事は2026年7月時点の一般的な情報提供を目的としたものです。相続の手続きや期限、税額の計算は、遺産の内容・相続人の構成・個々のご家庭の事情によって大きく異なります。具体的な手続きや申告にあたっては、税理士・司法書士・弁護士等の専門家へ必ずご確認ください。
第1章 相続手続きの全体像(期限別ロードマップ)
・相続手続き全体を、期限つきの1枚のロードマップとして俯瞰する
・「7日・14日・3ヶ月・4ヶ月・10ヶ月・3年」という主要な節目の意味
・全体を貫く「相続人の確定」と「財産の調査」という土台
相続手続きを乗り越えるうえで、最初にやっておきたいのが全体像の把握です。個々の手続きは複雑に見えても、時系列で並べてみると、「死亡直後の届出」→「相続するか放棄するかの判断」→「税金の申告」→「財産の名義変更」という大きな流れに整理できます。まずは次の表で、いつまでに何をするのかという全体のロードマップをつかんでください。
| 期限のめやす | 主な手続き | 内容 |
|---|---|---|
| 7日以内 | 死亡届・火葬許可申請 | 死亡を知った日から7日以内に市区町村へ提出(戸籍法86条) |
| 14日前後 | 世帯主変更・年金・保険 | 世帯主変更届、年金受給停止、健康保険・介護保険の資格喪失手続き |
| すみやかに | 遺言書の確認・相続人と財産の調査 | 遺言書の有無確認、戸籍収集による相続人確定、財産の洗い出し |
| 3ヶ月以内 | 相続放棄・限定承認の判断 | 借金が多い等の場合、家庭裁判所へ申述(民法915条) |
| 4ヶ月以内 | 準確定申告 | 被相続人の所得税を相続人が申告・納付 |
| 10ヶ月以内 | 相続税の申告・納付 | 遺産分割協議を経て、被相続人の住所地の税務署へ |
| 3年以内 | 相続登記(名義変更) | 不動産の名義変更。2024年4月義務化(不動産登記法76条の2) |
表を見ると、期限のある手続きが立て続けに続くことが分かります。とくに、3ヶ月の相続放棄、4ヶ月の準確定申告、10ヶ月の相続税申告は、いずれも「相続の開始を知った日」を起点に時間が進んでいくため、のんびり構えていると、あっという間に期限が迫ってきます。一方で、7日以内の死亡届などは、多くの場合、葬儀社のサポートを受けながら進められます。
表の期限は「めやす」であり、起算点(いつから数えるか)は手続きによって異なります。たとえば相続放棄や相続税は「相続の開始があったことを知った日(の翌日)」から数えるのに対し、死亡届は「死亡を知った日」から数えます。ご自身のケースでいつが起点になるかは、専門家に確認すると確実です。
すべての土台は「相続人の確定」と「財産の調査」
ロードマップのなかでも、あらゆる手続きの前提となるのが、「誰が相続人か(相続人の確定)」と「何が遺産か(相続財産の調査)」の2つです。相続放棄をすべきかどうかも、相続税がかかるかどうかも、誰がどの財産を引き継ぐかも、この2つがはっきりしなければ判断できません。そのため、死亡直後の届出を終えたら、できるだけ早くこの調査に取りかかることが、後々の手続きをスムーズに進めるカギになります。
とくに、相続財産のなかに不動産が含まれるご家庭では、不動産の価値や状況の把握が、相続税の試算にも、遺産分割の話し合いにも、大きく影響します。当社では、相続した不動産の現状整理や査定を通じて、こうした判断材料をそろえるお手伝いをしています。「実家をどうするか決めかねている」という段階からご相談いただけます。
☑ 相続手続きは「届出→承認/放棄の判断→税の申告→名義変更」という期限つきの流れ
☑ 7日・14日・3ヶ月・4ヶ月・10ヶ月・3年という主要な節目を最初に把握しておく
☑ すべての土台は「相続人の確定(戸籍収集)」と「相続財産の調査」の2つ
第2章 死亡直後〜2週間にやること(死亡届・各種届出)
・7日以内に必要な死亡届と火葬許可申請の流れ
・14日前後に手続きする世帯主変更・年金・健康保険
・慌ただしい時期に押さえておきたい優先順位
身内が亡くなってから最初の2週間ほどは、葬儀の準備と並行して、役所への届出が集中する時期です。多くは葬儀社の案内に沿って進められますが、どのような手続きがあるのかを知っておくと、抜け漏れを防げます。ここでは、7日以内と14日前後に分けて、代表的な手続きを整理します。
7日以内:死亡届と火葬許可申請
まず必要になるのが死亡届の提出です。死亡届は、死亡を知った日から7日以内に、亡くなった方の本籍地・死亡地、または届出人の住所地の市区町村役場へ提出します。医師が作成する死亡診断書(または死体検案書)と一体になった様式で、通常は葬儀社が提出を代行してくれることも多い手続きです。
死亡届を提出すると、あわせて火葬許可証(埋火葬許可証)の交付を受けます。これがないと火葬ができないため、葬儀の日程とも密接に関わります。なお、死亡診断書は生命保険の請求や各種手続きでも必要になるため、役所へ提出する前に複数枚コピーを取っておくと、後の手続きがスムーズです。
戸籍法86条は、死亡の届出について「届出は、死亡の事実を知った日から七日以内にこれをしなければならない」と定めています。届出先は、死亡地・本籍地または届出人の所在地の市区町村長とされています(戸籍法88条ほか)。
14日前後:世帯主変更・年金・健康保険
葬儀が一段落すると、次は役所や年金事務所での手続きが続きます。代表的なものが、世帯主が亡くなった場合の世帯主変更届、年金の受給停止(未支給年金の請求)、そして健康保険・介護保険の資格喪失手続きです。これらは、おおむね14日前後を一つのめやすとして進めます。
| 手続き | 内容(一般的な例) | めやす |
|---|---|---|
| 世帯主変更届 | 世帯主が亡くなり、残りの世帯員が2人以上の場合に届出 | 14日以内 |
| 年金の受給停止 | 年金事務所等へ連絡し受給を停止、未支給年金があれば請求 | すみやかに |
| 健康保険の資格喪失 | 国民健康保険・後期高齢者医療などの資格喪失、保険証の返却 | 14日前後 |
| 介護保険の資格喪失 | 被保険者証の返却、保険料の精算 | 14日以内 |
| 公共料金・各種契約 | 電気・ガス・水道・携帯・サブスク等の名義変更や解約 | すみやかに |
これらの手続きは、加入していた制度(会社の健康保険か国民健康保険か等)やお住まいの市区町村によって、必要書類や窓口が異なります。一度にすべてを完璧にこなそうとせず、役所の「おくやみ窓口」やチェックリストを活用すると、抜け漏れを防ぎやすくなります。近年は、複数の手続きをまとめて案内してくれる「おくやみコーナー」を設ける自治体も増えています。
この時期は精神的にも肉体的にも負担が大きく、すべてを完璧に進めるのは難しいものです。期限のある死亡届・火葬許可を最優先とし、それ以外は落ち着いてから一つずつ進めても間に合うものが少なくありません。ご家族で手分けをする、専門家に相談するなど、無理をしすぎない進め方を心がけてください。
☑ 死亡届は「死亡を知った日から7日以内」に市区町村へ(戸籍法86条)。火葬許可もこの流れ
☑ 死亡診断書は複数枚コピーを取っておくと後の手続きが楽になる
☑ 14日前後で世帯主変更・年金・健康保険・介護保険の手続きを進める
第3章 相続人と相続財産の確定(戸籍・財産調査)
・「誰が相続人か」を戸籍で確定させる作業(相続人の調査)
・「何が遺産か」を洗い出す相続財産の調査(プラスもマイナスも)
・遺言書の有無の確認と、その取り扱い
死亡直後の届出が一段落したら、いよいよ相続手続きの中心となる作業に入ります。それが相続人の確定と相続財産の調査、そして遺言書の有無の確認です。これらは、相続放棄をすべきか、相続税がかかるか、誰が何を相続するか、といったすべての判断の土台になります。
遺言書の有無を確認する
相続の進め方は、有効な遺言書があるかどうかで大きく変わります。遺言書があれば、原則としてその内容に沿って遺産を分けることになるためです。まずは、自宅の金庫や貸金庫、被相続人の書斎などを確認しましょう。公正証書遺言の場合は、最寄りの公証役場で遺言の有無を検索できる仕組みがあります。
自宅などで見つかった自筆証書遺言は、原則として、勝手に開封せず、家庭裁判所で検認という手続きを受ける必要があります。ただし、2020年に始まった法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して預けられていた遺言書については、検認が不要とされています。当社では自筆証書遺言の保管制度を扱った記事も別途ご用意していますので、あわせてご参照ください。
相続人を戸籍で確定させる
次に、誰が法定相続人になるのかを確定させます。これは思い込みで判断せず、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本)をたどって確認するのが原則です。こうして戸籍をさかのぼることで、たとえば前婚での子どもや認知した子どもなど、把握していなかった相続人が判明することもあります。
相続人が一人でも欠けたまま進めた遺産分割協議は無効になってしまうため、この戸籍集めは、後の手続きすべての正確性を左右する重要な作業です。集めた戸籍一式は、法定相続情報一覧図という制度を使って法務局に証明してもらうと、銀行や法務局での手続きのたびに戸籍の束を提出せずに済み、便利です。
相続財産を調査する(プラスもマイナスも)
あわせて進めたいのが相続財産の調査です。不動産(土地・建物)、預貯金、株式・投資信託などのプラスの財産だけでなく、借入金・未払い金・連帯保証といったマイナスの財産も、もれなく洗い出す必要があります。マイナスの財産の把握は、相続放棄をすべきかどうかの判断に直結するためです。
| 種類 | 主な財産 | 調べ方の例 |
|---|---|---|
| 不動産 | 土地・建物 | 固定資産税の納税通知書、名寄帳、登記事項証明書 |
| 金融資産 | 預貯金・株式・投資信託 | 通帳、残高証明書、証券会社の取引報告書 |
| 負債(マイナス) | 借入金・未払い金・保証債務 | 契約書、督促状、信用情報機関への照会 |
| その他 | 生命保険・自動車・貴金属など | 保険証券、契約書類 |
不動産については、市区町村から届く固定資産税の納税通知書や、市区町村で取得できる名寄帳(固定資産課税台帳)を手がかりに、被相続人が所有していた不動産を確認します。これらをもとに、相続税がかかりそうかの見当をつけていきます。
☑ まず遺言書の有無を確認。自筆証書遺言は原則、家庭裁判所の検認が必要(保管制度利用分は不要)
☑ 相続人は出生から死亡までの連続した戸籍で確定させる(法定相続情報一覧図が便利)
☑ 相続財産はプラス・マイナス双方を調査。負債の把握は相続放棄の判断に直結する
第4章 3ヶ月の相続放棄・4ヶ月の準確定申告
・借金が多い等の場合に検討する「3ヶ月以内の相続放棄」
・見落とされやすい「4ヶ月以内の準確定申告」
・どちらも起算点は「相続の開始を知った日」である点
財産調査で全体像が見えてくると、次に来るのが3ヶ月と4ヶ月という2つの期限です。ひとつは、相続するかどうかを決める相続放棄・限定承認の期限、もうひとつは、亡くなった方の所得税を精算する準確定申告の期限です。いずれも見落とすと不利益が生じかねない重要な手続きです。
3ヶ月以内:相続放棄・限定承認の判断
相続財産の調査の結果、プラスの財産よりも借金などのマイナスの財産が多い、あるいは遠方の不要な不動産を引き継ぎたくない、といった場合に検討するのが相続放棄です。相続放棄をすると、はじめから相続人でなかったものとみなされ、プラスもマイナスも一切引き継がないことになります。
民法915条1項本文は「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない」と定めています。この3ヶ月間を「熟慮期間」と呼び、相続放棄・限定承認は家庭裁判所への申述によって行います。
注意したいのは、この3ヶ月という期限の起算点が、原則として「死亡日」ではなく「自己のために相続の開始があったことを知った時」である点です。また、財産調査に時間がかかり3ヶ月では判断しきれない場合は、期間が満了する前に家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てることもできます。相続放棄の詳しい手続きは、当社の別記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
相続放棄を検討している間に、被相続人の預金を使ったり、財産を処分したりすると、相続を承認したものとみなされ、放棄ができなくなることがあります(法定単純承認)。放棄の可能性が少しでもある場合は、財産にはできるだけ手をつけず、早めに弁護士・司法書士に相談することをおすすめします。
4ヶ月以内:被相続人の準確定申告
意外と見落とされやすいのが準確定申告(じゅんかくていしんこく)です。これは、亡くなった方に一定の所得があった場合に、その年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が代わりに行う所得税の確定申告です。個人事業を営んでいた方、不動産の家賃収入があった方、一定額以上の年金を受けていた方などで必要になることがあります。
準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内とされています。通常の確定申告のように「翌年の3月15日まで」ではない点に注意が必要です。対象になるかや申告内容は被相続人の所得状況によって変わるため、税理士に確認するのが確実です。
☑ 借金が多い等の場合、相続放棄・限定承認は「知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所へ(民法915条)
☑ 放棄検討中は財産に手をつけない。間に合わなければ熟慮期間の伸長を申し立てられる
☑ 準確定申告は「知った日の翌日から4ヶ月以内」。事業・不動産収入等があった方は要確認
第5章 10ヶ月の相続税申告(基礎控除・遺産分割)
・相続税の申告・納付期限「10ヶ月以内」とその前提となる遺産分割
・相続税がかかるかどうかの目安「基礎控除」の計算
・遺産分割協議書の作成と、話し合いがまとまらないときの流れ
相続手続きのなかでも、金額的な影響が大きく、期限のプレッシャーも強いのが相続税の申告です。相続税の申告・納付の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内とされ、被相続人の住所地を管轄する税務署へ申告します。この10ヶ月の間に、遺産分割の話し合いをまとめ、税額を計算し、納税まで済ませる必要があります。
まず「基礎控除」を超えるかを確認する
そもそも相続税は、すべての相続でかかるわけではありません。遺産の総額が基礎控除の範囲内に収まっていれば、原則として相続税はかからず、申告も不要とされています。この基礎控除は、次の式で計算します。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
(例)法定相続人が3人の場合:3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人であれば、基礎控除額は4,800万円です。遺産の総額(プラスの財産から借金などを差し引いた額)がこの4,800万円を超えなければ、相続税は原則かからないことになります。このため、相続税がかかるかどうかを見極めるには、第3章で行った相続人の確定と財産調査が欠かせません。とくに不動産は評価額の把握が重要で、金額次第で課税の有無が変わってきます。
相続税の申告・納付期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」とされています(相続税法の規定による)。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、税額を軽減する制度もありますが、これらの適用には原則として申告が必要です。
遺産分割協議と、まとまらないときの流れ
相続税の申告や不動産の名義変更を進めるには、「誰がどの財産を、どれだけ相続するか」を決める必要があります。遺言書がない場合、これを相続人全員の話し合いで決めるのが遺産分割協議です。協議がまとまったら、その内容を遺産分割協議書にまとめ、相続人全員が署名・押印(実印)します。この書面が、預貯金の解約や不動産の名義変更の際に必要になります。
もし話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の手続きを利用することになります。流れとしては、まず調停(調停委員を交えた話し合い)を行い、それでもまとまらなければ審判によって裁判所が分け方を決める、という段階を踏みます。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| ① 遺産分割協議 | 相続人全員の話し合いで分け方を決め、協議書を作成 |
| ② 調停 | まとまらない場合、家庭裁判所で調停委員を交えて話し合う |
| ③ 審判 | 調停でも決まらない場合、家庭裁判所が分け方を決定する |
相続税の申告期限(10ヶ月)までに遺産分割がまとまらないと、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例といった有利な制度を、いったん適用しないまま申告・納税しなければならない場合があります(一定の手続きにより、後から適用を受けられる余地は残されています)。不利益を避けるためにも、早めに税理士へ相談することが大切です。
遺産に不動産が含まれる場合、その評価額の把握と、「誰が引き継ぐのか」「売却して分けるのか」といった分割方針の検討が、相続税額にも遺産分割にも大きく影響します。当社では、相続不動産の査定や現状整理を通じて、こうした判断材料をそろえるお手伝いをしています。
☑ 相続税の申告・納付は「知った日の翌日から10ヶ月以内」に被相続人の住所地の税務署へ
☑ 基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えなければ原則、相続税はかからない
☑ 遺産分割協議→調停→審判の順。10ヶ月までにまとめないと有利な特例を使えない場合がある
第6章 相続登記(3年義務化)と不動産の扱い
・2024年4月に義務化された相続登記(不動産の名義変更)の要点
・「3年以内」という期限と、怠った場合の過料
・相続した不動産をどうするか(保有・売却など)の考え方
相続手続きの締めくくりともいえるのが、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する相続登記です。この相続登記は、長らく任意とされてきましたが、2024年(令和6年)4月1日から義務化されました。所有者不明土地の増加が社会問題となったことが、この改正の背景にあります。
不動産登記法76条の2は、相続により不動産を取得した相続人に対し、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から三年以内」に相続登記を申請する義務を課しています。正当な理由なくこれを怠った場合、10万円以下の過料の対象となり得るとされています。
ポイントは、相続登記が「3年以内」に義務づけられたことと、正当な理由なく怠ると過料の対象になり得ることです。また、この義務化は改正前に相続した不動産にも適用され、過去の相続で名義変更をしないままになっている不動産についても、一定の期間内に登記をする必要があるとされています。「昔、親から相続したまま名義がそのままになっている」という不動産をお持ちの方は、早めの確認をおすすめします。
遺産分割が長引くときの「相続人申告登記」
「3年以内に登記」といっても、遺産分割の話し合いが長引き、誰が不動産を引き継ぐか決まらないこともあります。こうした場合に備えて、義務化とあわせて相続人申告登記という新しい制度が設けられました。これは、「自分が相続人である」旨を法務局に申し出ることで、ひとまず相続登記の申請義務を果たしたものとみなしてもらえる、簡易な仕組みです。
ただし、相続人申告登記はあくまで暫定的な対応です。その後、遺産分割がまとまったら、改めて正式な相続登記(名義変更)を行う必要がある点には注意が必要です。相続登記の詳しい要件や過料については、当社の別記事でも解説していますので、あわせてご参照ください。
相続した不動産をどうするか
名義変更を終えたあと、あるいはそれと並行して考えたいのが、相続した不動産を今後どうするかという点です。選択肢は大きく分けて、住み続ける・賃貸に出すなどして保有する、あるいは売却する、という方向に分かれます。固定資産税や維持管理の負担、遺産分割で公平に分ける必要性などから、売却を選ばれるご家庭も少なくありません。
とくに、相続人が複数いて公平に分けたい場合や、誰も住む予定がなく空き家になってしまう場合には、売却して現金化し、分け合う方法が現実的な選択肢になります。どの方法が適しているかは、不動産の状況やご家族の希望によって変わります。当社では、相続した不動産の査定・売却・管理までを一貫してサポートしています。
☑ 相続登記は2024年4月に義務化。「取得を知った日から3年以内」に申請(不動産登記法76条の2)
☑ 正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象。過去の相続分にも適用される
☑ 分割が長引くときは相続人申告登記で暫定対応も可能。名義変更後は保有か売却かを検討
第7章 よくある質問(Q&A)
・相続手続きの全体像について実務でよく寄せられる疑問への回答
・期限・順番・専門家への依頼にまつわる素朴な質問の整理
Q1.相続の手続きは、結局どこから始めればいいですか?
まずは7日以内の死亡届(葬儀社が代行することも多い)を済ませ、そのうえで「遺言書の有無の確認」「相続人の確定(戸籍集め)」「相続財産の調査」の3つに早めに取りかかるのがおすすめです。この3つが、相続放棄をすべきか、相続税がかかるか、誰が何を相続するか、といったその後のすべての判断の土台になるためです。全体像は本記事の第1章のロードマップをご参照ください。
Q2.相続税は、必ず払わなければならないのですか?
いいえ。相続税は、遺産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合にかかる税金です。遺産の総額が基礎控除の範囲内であれば、原則として相続税はかからず、申告も不要とされています。ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額をゼロにする場合は、申告そのものは必要になる点に注意が必要です。実際に課税されるかは、不動産の評価額なども含めた計算が必要なため、税理士にご確認ください。
Q3.すべての手続きを自分でやらないといけませんか?
いいえ。相続手続きは、内容に応じて専門家に依頼できます。一般に、相続登記や遺産分割協議書の作成は司法書士、相続税の申告は税理士、相続人間で争いがある場合は弁護士が主な相談先とされています。すべてをご自身で抱え込まず、必要に応じて専門家の力を借りることで、期限の管理や書類の不備を防ぎやすくなります。
Q4.期限を過ぎてしまったら、どうなりますか?
手続きによって影響は異なります。たとえば相続放棄の3ヶ月は、原則として過ぎると放棄が難しくなりますが、起算点の考え方によっては認められる場合もあります。相続税の10ヶ月を過ぎると、加算税や延滞税といった負担が生じることがあります。相続登記の3年は、正当な理由なく怠ると過料の対象になり得ます。いずれも「過ぎたかもしれない」と感じた時点で、あきらめずに早めに専門家へ相談することが大切です。
Q5.相続した実家を売りたい場合、いつ動けばよいですか?
売却するには、原則として先に相続登記(名義変更)で不動産を相続人名義にしておく必要があります。そのため、遺産分割の方針として「売却して分ける」と決めた場合は、相続登記を済ませてから売却に進むのが基本的な流れです。とはいえ、査定や現状の把握そのものは、名義変更の前からでも進められます。「いくらで売れそうか」を早めに知っておくと、遺産分割の話し合いもスムーズになります。
☑ まず死亡届を済ませ、遺言確認・相続人確定・財産調査の3つに早めに着手する
☑ 相続税は基礎控除を超える場合にかかる。特例利用時は申告が必要な点に注意
☑ 登記は司法書士、税は税理士、争いは弁護士。期限を過ぎても早めの相談が大切
まとめ
相続の手続きは、7日以内の死亡届に始まり、14日前後の各種届出、相続人と財産の調査、3ヶ月の相続放棄、4ヶ月の準確定申告、10ヶ月の相続税申告、そして3年以内の相続登記へと続く、期限つきの一連の流れです。一つひとつは複雑に見えても、時系列のロードマップとして全体を俯瞰すれば、いま何をすべきか、次に何が待っているのかが見えてきます。
とくに、あらゆる手続きの土台となるのが「相続人の確定(戸籍集め)」と「相続財産の調査」です。この2つがはっきりして初めて、相続放棄をすべきか、相続税がかかるか、誰がどの財産を引き継ぐかといった判断ができるようになります。遺産に不動産が含まれる場合は、その評価額と扱い方が、相続税にも遺産分割にも大きく影響するため、早めに全体像を把握しておくことが大切です。
① 相続は「7日→14日→3ヶ月→4ヶ月→10ヶ月→3年」という期限つきの流れ。まず全体像を俯瞰する
② すべての土台は「相続人の確定」と「財産調査」。相続税は基礎控除(3,000万円+600万円×人数)が目安
③ 相続登記は2024年4月に義務化され「3年以内」に。怠ると過料の対象になり得る(不動産登記法76条の2)
慣れない手続きが期限つきで次々に押し寄せるなかで、すべてをご自身だけで抱え込む必要はありません。相続登記は司法書士、相続税は税理士、争いがあれば弁護士と、場面に応じて専門家の力を借りることで、期限の管理や書類の不備を防ぎやすくなります。当社では、相続した不動産の査定・現状整理から売却・管理までを一貫してサポートしています。不動産の取り扱いにお悩みの方は、お早めにご相談ください。
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本記事は2026年7月時点の法令・制度をもとにした一般的な情報提供であり、個別の相続手続きの結果や税額を保証するものではありません。各手続きの期限の起算点、必要書類、相続税の課税の有無や税額、相続登記の要否などは、遺産の内容や個々のご事情によって異なります。具体的な手続き・申告にあたっては、税理士・司法書士・弁護士等の専門家へ必ずご確認ください。
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