【完全ガイド】生前贈与で実家を子へ|暦年課税と相続時精算課税の選び方・2024年改正後

「元気なうちに、実家を子どもへ渡しておきたい」——ヘリテージリンクには、そうしたご相談が年々増えています。背景には、相続発生後に名義変更や納税で家族が苦労する姿を見聞きし、生前に資産の道筋をつけておきたいと考えるオーナー様の増加があります。なかでも実家(自宅やご両親が住む家)は、思い入れも大きく、誰にどう引き継ぐかで家族の将来が大きく変わる資産です。

その手段として注目されるのが生前贈与です。ただし2024年(令和6年)1月施行の税制改正により、生前贈与のルールは大きく変わりました。暦年課税では相続前の贈与を相続財産に加算する期間が「3年」から「7年」へ延長され、相続時精算課税には新たに「年110万円の基礎控除」が設けられました。この改正を理解しないまま贈与を進めると、想定外の税負担が生じるおそれがあります。

本記事では、会社公式メディアとして、国税庁等の一次情報にもとづき、生前贈与の基礎知識から「暦年課税」と「相続時精算課税」の選び方、不動産特有のコスト、ケーススタディ、よくあるご質問までを体系的に解説します。読み終えるころには、ご自身の家族にとってどの方法が検討に値するか、その判断の軸が見えてくるはずです。

💡 この記事でわかること
・生前贈与とは何か、暦年課税と相続時精算課税の仕組みの違い
・2024年改正の2大ポイント(生前贈与加算7年延長/精算課税の年110万円基礎控除)
・実家を子へ渡すときの選び方A/B/C(手順・コスト・向くケース+比較表)
・不動産を贈与すると登録免許税・不動産取得税が相続より高くなる点
・住宅取得等資金贈与の非課税特例、当社アセットケア・家族信託との組合せ
こんなオーナー様のための記事です(想定読者チェックリスト)
☐ 実家や自宅を、元気なうちに子へ引き継ぎたいと考えている
☐ 「暦年贈与」「相続時精算課税」という言葉は聞くが違いがわからない
☐ 2024年の税制改正で何が変わったのか整理したい
☐ 不動産を贈与すると、相続と比べて税金がどう違うのか知りたい
☐ 住宅資金の援助を非課税で行う方法を探している
☐ 家族信託や遺言と、どう組み合わせるべきか迷っている

なお、本記事は一般的な制度解説であり、個別の税額計算や具体的な手続きの可否は、税理士・弁護士等の専門家への確認が必要です。当社は提携専門家とともに、ご相談者様ごとの状況に応じたアセットケアをご提案しています。

第1章 生前贈与の基礎知識|2つの課税方式と2024年改正

🎯 この章で解説すること
・生前贈与とは何か、なぜ相続対策として使われるのか
・暦年課税と相続時精算課税という2つの課税方式の仕組み
・2024年1月施行の税制改正の2大ポイント

1-1. 生前贈与とは|相続との違い

生前贈与とは、財産を持つ方が存命中に、自分の意思で財産を他者へ無償で渡すことをいいます。これに対し、相続は人が亡くなったときに、その財産が法定相続人や遺言で指定された人へ移ることを指します。同じ「財産が次世代へ移る」現象でも、生前か死後かで適用される税金も手続きも異なります。

生前贈与が相続対策として用いられる主な理由は3つあります。第一に、渡す相手を自分で選べること。実家を「同居している長男に」「介護してくれた次女に」と、自分の意思で確実に引き継げます。第二に、計画的に進めれば将来の相続税負担を軽くできる場合があること。第三に、相続発生後の遺産分割協議の対象から外れ、家族間のトラブルを未然に防ぎやすいことです。

ただし、贈与には贈与税という税金がかかります。贈与税は相続税よりも税率の刻みが急で、まとまった財産を一度に贈与すると高額になりがちです。そこで、贈与税には2つの課税方式が用意されています。それが「暦年課税」と「相続時精算課税」です。実家のような大きな資産をどう渡すかは、まずこの2つの仕組みを正しく理解することから始まります。

💡 ポイント
生前贈与は「節税の道具」である前に、誰に何を渡すかを自分の意思で決める手段です。税金だけで判断せず、家族の状況や思いも含めて検討することが大切です。

1-2. 暦年課税の仕組み|年110万円の基礎控除

暦年課税は、贈与税の原則的な課税方式です。1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の合計額から、基礎控除110万円を差し引いた残額に対して贈与税が課されます。逆にいえば、年110万円以内の贈与であれば贈与税はかからず、申告も不要です。この基礎控除は、贈与を受ける人(受贈者)一人あたり年110万円です。

税率には「一般税率」と「特例税率」の2種類があります。特例税率は、18歳以上の人が父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受けた場合に適用され、一般税率よりやや低く設定されています。実家を子へ贈与するケースの多くは、この特例税率が適用されます。具体的な税率は次の速算表のとおりです(出典:国税庁タックスアンサーNo.4408)。

基礎控除後の課税価格 一般税率/控除額 特例税率/控除額
200万円以下 10%/- 10%/-
300万円以下 15%/10万円 15%/10万円(400万円以下)
400万円以下 20%/25万円
600万円以下 30%/65万円 20%/30万円
1,000万円以下 40%/125万円 30%/90万円
1,500万円以下 45%/175万円 40%/190万円
3,000万円以下 50%/250万円 45%/265万円
4,500万円以下 55%/400万円(3,000万円超) 50%/415万円
4,500万円超 55%/640万円

たとえば実家の土地建物の評価額が3,000万円で、これを一度に特例税率で贈与した場合、(3,000万円-110万円)×45%-265万円=1,035.5万円もの贈与税がかかります。不動産を暦年課税で一括贈与するのが現実的でないことが、この数字からわかります。暦年課税は本来、毎年少しずつ現金などを渡していく「コツコツ型」に向いた方式なのです。

1-3. 相続時精算課税の仕組み|2,500万円特別控除

相続時精算課税は、その名のとおり「贈与のときは課税を軽くし、相続のときにまとめて精算する」という考え方の方式です。原則として60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫へ贈与する場合に選択できます。この方式を選ぶと、贈与者ごとに累計2,500万円までの特別控除が使え、その範囲内なら贈与税はかかりません。2,500万円を超えた部分には一律20%の贈与税が課されます。

📖 相続税法 第21条の9〜(相続時精算課税の選択)/タックスアンサーNo.4103
「特別控除の限度額は2,500万円。前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。」「贈与者は贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母など、受贈者は贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫など)」

ただし「精算課税」という名のとおり、この制度で贈与した財産は、贈与者が亡くなったときに相続財産に持ち戻して相続税を計算します。つまり贈与時点では課税を先送りしているにすぎず、最終的には相続税の対象になります。評価額2,500万円の実家を精算課税で贈与しても、相続時にその2,500万円分(贈与時の評価額)が相続財産に加算される点に注意が必要です。

もう一つの重要な注意点は、一度この制度を選ぶと、その贈与者からの贈与については二度と暦年課税に戻せないことです。「今年だけ精算課税で大きく贈与し、来年からは暦年課税で110万円ずつ」といった使い分けはできません。選択は慎重に行う必要があります。

🚨 重要な注意
相続時精算課税を一度選択すると、その特定贈与者からの贈与は以後すべて精算課税となり、暦年課税へ変更することはできません。届出は税務署への提出が必要で、撤回もできません。選択前に必ず税理士へご相談ください。

1-4. 2024年改正の2大ポイント

2023年度(令和5年度)の税制改正により、2024年(令和6年)1月1日以後の贈与から、生前贈与のルールが大きく変わりました。実家を子へ渡すうえで知っておくべきポイントは、次の2つです。

改正点①:暦年課税の生前贈与加算が「3年→7年」に延長。暦年課税では従来、相続開始前3年以内に受けた贈与は相続財産に加算(持ち戻し)して相続税を計算していました。これが2024年1月以後の贈与から、加算対象期間が最大7年に延長されます。ただし急な負担増を避けるため経過措置が設けられており、延長された4年分(相続開始前3年超7年以内)の贈与については、合計100万円までは相続財産に加算されません。

📖 相続税法 第19条(贈与財産の加算)/タックスアンサーNo.4161
「令和6年1月1日以後の暦年課税に係る贈与から、加算対象期間が3年から7年に拡大されました。」相続開始日ごとの加算対象期間は次のとおりです。
被相続人の相続開始日 加算対象期間
〜令和8年(2026年)12月31日 相続開始前3年以内
令和9年(2027年)1月1日〜令和12年(2030年)12月31日 令和6年1月1日から死亡の日までの間
令和13年(2031年)1月1日〜 相続開始前7年以内

この表からわかるように、7年加算がフルに適用されるのは2031年以降の相続からです。それまでは段階的に加算期間が延びていきます。暦年贈与による節税効果は、改正によって従来より小さくなったといえます。とくに高齢になってから慌てて暦年贈与を始めても、相続までの期間が短いと持ち戻されてしまい、効果が限定的になります。

改正点②:相続時精算課税に「年110万円の基礎控除」が新設。従来の精算課税は、暦年課税のような基礎控除がなく、1円でも贈与すれば申告が必要でした。これが2024年1月以後、暦年課税とは別枠で年110万円の基礎控除が設けられました。

📖 租税特別措置法 第70条の3の2(相続時精算課税に係る基礎控除)
「令和6年1月1日以後の贈与から、相続時精算課税に係る基礎控除額110万円が控除されます。」この基礎控除の範囲内(年110万円以下)であれば申告は不要で、しかも相続時の持ち戻し計算からも除外されます。

これは非常に大きな変更です。改正前の精算課税は「贈与した分はすべて相続時に持ち戻される」ため、節税効果が乏しいとされていました。しかし改正後は、年110万円以下の部分は持ち戻されないため、暦年課税の7年加算を気にせず毎年110万円を非課税で渡せます。精算課税の使い勝手が大きく向上したのが、2024年改正の隠れた目玉といえます。

⚠️ 注意
精算課税の年110万円基礎控除は、贈与者ごとではなく受贈者が受けた贈与の合計で年110万円です。複数の贈与者から精算課税で贈与を受ける場合は、各贈与者の課税価格で按分されます。詳細は税理士にご確認ください。

✅ 本章のまとめ
☐ 贈与税には「暦年課税(年110万円控除)」と「相続時精算課税(累計2,500万円控除)」の2方式がある
☐ 2024年改正で暦年課税の生前贈与加算が3年→最大7年に延長された
☐ 同改正で精算課税に年110万円の基礎控除が新設され、その分は持ち戻されない

第2章 現状と課題|実家の贈与でどちらを選ぶか

🎯 この章で解説すること
・改正が実家の生前贈与に与える影響
・暦年課税と精算課税、どちらを選ぶかの判断軸
・不動産を贈与する際に見落とされがちなコストの存在

2-1. 改正で暦年贈与の「駆け込み」が難しくなった

これまで相続対策の王道とされてきたのが、暦年課税の基礎控除を活用し、毎年110万円ずつ複数の子や孫へ贈与していく方法でした。10年続ければ、子1人あたり1,100万円を無税で移転できる計算です。しかし2024年改正で生前贈与加算が最大7年に延びたことで、相続直前の駆け込み贈与は効果が薄れました

具体的には、相続開始前7年以内に暦年贈与した分は、原則として相続財産に持ち戻されます。経過措置で延長4年分のうち100万円は控除されますが、それを超える部分は加算対象です。暦年贈与で節税効果を得るには、より早い段階から長期にわたって計画的に行う必要がある時代になったといえます。

2-2. 実家のような「大きな一括資産」は精算課税が選択肢に

第1章で見たとおり、実家のような評価額の大きい不動産を暦年課税で一括贈与すると、贈与税が極めて高額になります。一方、相続時精算課税なら累計2,500万円までは贈与税がかからないため、評価額2,500万円程度までの実家を一度に子へ渡したいというケースでは、精算課税が現実的な選択肢になります。

ただし精算課税で贈与した実家は、贈与時の評価額で相続財産に持ち戻されます。したがって「贈与税はかからなかったが、相続税はかかる」という結果になることもあります。精算課税は税金が消えるわけではなく、課税のタイミングと方式が変わるだけだと理解しておくことが重要です。値上がりが見込まれる資産を早めに移すと、低い贈与時評価額で固定できるメリットがある一方、値下がりする資産では逆効果になり得ます。

⚠️ 注意
実家を精算課税で子へ贈与すると、その土地は子の所有になるため、相続時に小規模宅地等の特例(評価額を最大80%減額)が使えなくなるケースがあります。この特例は相続で取得した宅地が対象であり、生前贈与には原則適用されません。実家の評価が高い場合は、この影響を必ず試算してください。

2-3. 不動産の贈与は「移転コスト」が相続より高い

実家の贈与を検討するうえで、贈与税以外に見落とされがちなのが名義変更にともなう移転コストです。不動産の所有権を移すには登記が必要で、その際に「登録免許税」がかかります。さらに贈与の場合には「不動産取得税」も課されます。これらは相続による移転と比べて高くなる傾向があります。

コスト項目 生前贈与の場合 相続の場合
登録免許税 固定資産評価額 × 2.0% 固定資産評価額 × 0.4%
不動産取得税 原則 評価額 × 3〜4%(軽減あり) 非課税

表のとおり、登録免許税だけで見ても贈与(2.0%)は相続(0.4%)の5倍です。加えて贈与では不動産取得税もかかります。固定資産評価額3,000万円の実家を贈与すると、登録免許税だけで60万円、これに不動産取得税が加わります。相続なら登録免許税は12万円で、不動産取得税は非課税です。「贈与税がかからない=コストゼロ」ではない点に注意が必要です。

💡 ポイント
不動産を子へ渡す方法を比較するときは、贈与税・相続税だけでなく、登録免許税・不動産取得税・専門家報酬を含めた「総コスト」で判断することが大切です。税目が複数にまたがるため、税理士・司法書士を交えた試算をおすすめします。

家族信託や遺言など、生前贈与以外の選択肢と組み合わせて検討することも有効です。家族信託の費用と手順については、家族信託の費用と手順を解説した完全ガイドで詳しく紹介しています。

✅ 本章のまとめ
☐ 改正で暦年贈与の駆け込み効果は薄れ、早期・長期の計画が必要になった
☐ 評価額の大きい実家には精算課税が選択肢になるが、持ち戻しと小規模宅地特例の制限に注意
☐ 不動産贈与は登録免許税2.0%・不動産取得税がかかり、相続より移転コストが高い

第3章 解決策|実家を子へ渡す3つの選び方

🎯 この章で解説すること
・選び方A:暦年課税でコツコツ移転する方法
・選び方B:相続時精算課税で実家を一括移転する方法
・選び方C:住宅取得等資金贈与の非課税特例を使う方法
・3つの方法の比較表と、向くケース・向かないケース

3-1. 選び方A:暦年課税でコツコツ移転する

暦年課税は、毎年110万円の基礎控除を活用して長期にわたり少しずつ財産を移す方法です。実家の不動産そのものを毎年小分けに贈与することも理論上は可能ですが(持分の一部贈与)、その都度登記費用がかかるため、現実には現金を毎年贈与し、将来の納税資金や住宅費用に充てる使い方が中心になります。

手順:①贈与契約書を毎年作成する→②贈与する財産(現金等)を受贈者へ渡す→③年110万円を超える場合は翌年2月1日〜3月15日に贈与税申告→④不動産の持分贈与なら法務局で登記。コスト:年110万円以内なら贈与税ゼロ。超過分は特例税率で課税。不動産持分の登記には登録免許税2.0%。

📋 ケース:佐藤さん(68歳・東京都内)
佐藤さんは長女と長男に、毎年それぞれ110万円ずつ現金を贈与し、将来実家を相続する際の納税資金づくりを進めています。改正で7年加算を意識し、60代のうちから早めに開始。「実家そのものは相続で渡し、現金は生前にコツコツ」という役割分担で設計しました。

向くケース:贈与する側がまだ若く健康で、相続まで長い時間が見込める/実家は相続で渡し、小規模宅地等の特例を活かしたい/現金など分けやすい資産を計画的に移したい。向かないケース:高齢で相続までの期間が短い/実家の不動産そのものを早く子名義にしたい。

3-2. 選び方B:相続時精算課税で実家を一括移転する

相続時精算課税は、累計2,500万円までの特別控除を使って実家のような大きな資産を一度に子へ渡すのに適した方式です。2024年改正で年110万円の基礎控除も加わったため、一括移転後も毎年110万円を非課税かつ持ち戻し対象外で渡せます。

手順:①適用要件(贈与者60歳以上・受贈者18歳以上の子孫)を確認→②実家の名義を子へ移す登記を行う→③贈与を受けた翌年2月1日〜3月15日に「相続時精算課税選択届出書」と贈与税申告書を提出→④以後、その贈与者からの贈与はすべて精算課税で申告。コスト:2,500万円以内は贈与税ゼロ(超過分は一律20%)。登録免許税2.0%、不動産取得税は別途。

📋 ケース:田中さん(72歳・埼玉県南部)
田中さんは、同居する長男に評価額2,200万円の実家を相続時精算課税で贈与しました。長男が確実に実家を引き継げるようにするのが目的です。贈与税はかかりませんでしたが、相続時にこの2,200万円が相続財産に持ち戻される点、登録免許税44万円と不動産取得税が必要になる点を、事前に税理士と確認したうえで判断しました。

向くケース:実家を確実に特定の子へ渡したい/将来値上がりが見込まれる資産を低い評価で固定したい/同居や事情で小規模宅地等の特例が使えない・使わない予定。向かないケース:実家に小規模宅地等の特例を適用したい/相続税自体が基礎控除内で発生しない見込み(その場合は相続で渡す方が移転コストが安い)。

小規模宅地等の特例を活かす選択肢については、小規模宅地等の特例で評価額を80%減らす方法もあわせてご確認ください。また親族間で売買による移転を検討する場合は、親族間売買の適正価格と贈与税の注意点が参考になります。

3-3. 選び方C:住宅取得等資金贈与の非課税特例を使う

実家そのものではなく、子が新たに住宅を取得するための資金を援助したい場合に有効なのが、住宅取得等資金贈与の非課税特例です。父母や祖父母から、住宅の新築・取得・増改築のための資金を贈与された場合、一定額まで贈与税が非課税になります。

📖 租税特別措置法 第70条の2(住宅取得等資金の贈与税の非課税)/タックスアンサーNo.4508
「令和6年1月1日から令和8年(2026年)12月31日までの贈与について、省エネ等住宅は1,000万円、それ以外の住宅は500万円まで非課税。」原則として贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得し居住することが要件です。

この特例は暦年課税の110万円や精算課税の2,500万円と併用できるのが大きな利点です。たとえば暦年課税と組み合わせれば、省エネ等住宅で最大1,110万円(1,000万円+110万円)を非課税で援助できる計算になります。さらにこの非課税枠は、生前贈与加算の対象にもなりません。

📋 ケース:鈴木さん(65歳・東京都西部)
鈴木さんは、結婚を機に住宅を購入する長男へ、省エネ基準を満たす住宅の取得資金として1,000万円を贈与し、本特例を適用しました。あわせて暦年課税の110万円も活用し、合計1,110万円を非課税で援助。「実家は将来相続で渡し、今は新生活を後押しする」という形で、世代をまたいだ資金の流れを設計しました。

向くケース:子がこれから住宅を購入・新築する予定/実家とは別に新居の資金援助をしたい。向かないケース:すでに住宅を取得済み/適用期限(2026年12月末)や居住要件を満たせない見込み。要件は細かく定められているため、必ず適用前に確認が必要です。

3-4. 3つの選び方の比較表

項目 A 暦年課税 B 相続時精算課税 C 住宅資金特例
非課税枠 年110万円 累計2,500万円+年110万円 最大1,000万円(省エネ等)
主な対象 現金等の継続移転 実家など大型資産の一括移転 住宅取得資金
相続時の持ち戻し 最大7年分(経過措置あり) 贈与財産を持ち戻し(年110万円分除く) 持ち戻しなし
暦年課税への復帰 不可
向く相続までの期間 長期 短〜中期も可 住宅取得時

どの方法が適しているかは、資産の種類・評価額・贈与者の年齢・家族構成・相続税の発生見込みによって変わります。複数の方法を組み合わせるのが有効なケースも少なくありません。当社では税理士と連携し、ご家族ごとに最適な組合せをご提案しています。

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✅ 本章のまとめ
☐ A暦年課税は長期・少額移転向き、B精算課税は実家の一括移転向き
☐ C住宅取得等資金の非課税特例(〜2026年末)は他方式と併用でき持ち戻しもない
☐ 資産・年齢・家族構成で最適解は変わるため、組合せ設計が有効

第4章 ケーススタディ|3つの家族の選択

🎯 この章で解説すること
・年齢・資産状況の異なる3家族が、どう生前贈与を設計したか
・各ケースで何を重視し、どの方法を選んだか
・実家の引き継ぎにおける判断のヒント

4-1. ケース1:早期から計画した60代夫婦

📋 ケース:山本さんご夫婦(夫64歳・妻61歳・東京都内)
2人の子に、それぞれ毎年110万円ずつ暦年贈与を開始。実家(評価額3,500万円)は相続で渡す前提で、小規模宅地等の特例の適用を見込んで設計。現金は生前に少しずつ移し、相続時の納税資金に充てる方針です。改正後の7年加算を踏まえ「早く始めるほど有利」と判断し、60代前半から着手しました。

山本さんご夫婦の判断のポイントは、実家は相続で渡して特例を活かし、現金は暦年贈与で移すという役割分担です。評価額の高い自宅に小規模宅地等の特例を適用すれば、相続税評価を大きく圧縮できる可能性があります。一方で、生前に現金を移しておくことで、相続時の納税資金不足を防ぐ狙いがあります。

4-2. ケース2:実家を確実に長男へ渡したい70代

📋 ケース:高橋さん(74歳・埼玉県東部)
配偶者を亡くし、同居する長男に実家(評価額2,400万円)を確実に引き継がせたいと希望。きょうだい間の将来の争いを避けるため、相続時精算課税を選択して生前に長男名義へ。贈与税はかからず、移転コスト(登録免許税・不動産取得税)と相続時の持ち戻しを税理士と確認のうえ実行しました。

高橋さんが重視したのは、税金よりも「確実に長男へ渡す」という意思の実現でした。相続では遺産分割協議が必要になり、きょうだい間で意見が割れる可能性があります。生前に精算課税で名義を移すことで、その不確実性を排除しました。あわせて、他のきょうだいへの配慮として現金を遺す内容の遺言も準備し、全体のバランスを取っています。

4-3. ケース3:新居購入の子を援助したい親

📋 ケース:伊藤さん(67歳・東京都内)
長女夫婦のマイホーム購入にあたり、住宅取得等資金贈与の非課税特例で省エネ等住宅向けに1,000万円を援助。実家は将来相続で渡す前提のまま、今は新生活の後押しに資金を充てました。期限(2026年末)と居住要件を満たすよう、贈与から取得・入居までのスケジュールを綿密に管理しています。

伊藤さんのケースは、実家の引き継ぎと、子の住宅取得支援を切り分けて考えた好例です。実家そのものは無理に生前贈与せず相続に回し、いま必要な住宅資金は非課税特例で援助する。世代をまたぐ資金の流れを、時期と目的で整理した設計といえます。

⚠️ 注意
上記のケースはいずれも一般的な例として再構成したものであり、特定の個人を指すものではありません。同じように見える状況でも、評価額・家族構成・他の資産の有無で最適な選択は変わります。実行前には必ず税理士等の専門家にご確認ください。

✅ 本章のまとめ
☐ 実家は相続で渡し特例を活かす設計、確実に渡すため精算課税を選ぶ設計、双方がある
☐ 住宅資金は非課税特例で切り分けて援助できる
☐ 同じ状況でも最適解は異なるため、必ず個別に専門家確認を

第5章 よくあるご質問(Q&A)

🎯 この章で解説すること
・生前贈与で実家を渡す際に、ご相談者様からよく寄せられる疑問
・改正後のルールに関する具体的な確認事項

Q1. 暦年贈与の110万円は、子1人ごとに使えますか?

はい。暦年課税の基礎控除110万円は、贈与を受ける人(受贈者)1人あたり年110万円です。子が2人いれば、それぞれに110万円ずつ、合計220万円を無税で贈与できます。ただし、複数の人から贈与を受ける受贈者側では、もらった合計額で110万円判定となる点にご注意ください。

Q2. 改正後、暦年贈与はもう意味がないのでしょうか?

そうではありません。7年加算は「相続開始前」7年以内の贈与が対象です。相続まで十分な期間があれば、加算対象外の期間に渡した分は持ち戻されません。早期から長期で計画する場合、暦年贈与は引き続き有効な選択肢です。また、相続人でない孫への贈与は原則として加算対象外という考え方もあり、設計次第で活用余地があります(個別に税理士確認を)。

Q3. 相続時精算課税を選ぶと、本当に暦年課税には戻せませんか?

はい。一度精算課税を選択すると、その特定贈与者からの贈与は以後すべて精算課税となり、暦年課税へ戻すことはできません。ただし、贈与者ごとに選べるため、たとえば「父からは精算課税、母からは暦年課税」という使い分けは可能です。

Q4. 精算課税の年110万円基礎控除は、毎年使えますか?

はい。2024年改正で新設された精算課税の基礎控除は毎年110万円使え、その範囲内なら申告も不要で、相続時の持ち戻しもありません。実家を2,500万円の特別控除で一括移転した後も、毎年110万円ずつ非課税で追加贈与できます。

Q5. 実家を贈与すると、相続のときより税金は安くなりますか?

一概には言えません。贈与では登録免許税が評価額の2.0%、不動産取得税もかかり、移転コストは相続より高くなるのが一般的です。さらに精算課税では贈与財産が相続時に持ち戻されます。相続なら登録免許税0.4%・不動産取得税非課税で、小規模宅地等の特例も使える可能性があります。節税につながるケースもあれば、相続で渡す方が有利なケースもあるため、必ず試算が必要です。

Q6. 住宅取得等資金の特例は、いつまで使えますか?

現行の適用期限は令和8年(2026年)12月31日までの贈与です。非課税限度額は省エネ等住宅で1,000万円、それ以外で500万円。原則として贈与の翌年3月15日までに住宅を取得・居住する必要があります。延長の有無や要件は今後の税制改正で変わる可能性があるため、最新情報の確認をおすすめします。

Q7. 贈与契約書は作らなければいけませんか?

法律上は口頭でも贈与は成立しますが、贈与契約書を作成しておくことを強くおすすめします。税務調査などで「贈与の事実」を証明する有力な資料になり、名義預金(実質は親の財産とみなされること)と疑われるリスクを下げられます。不動産贈与では登記も必須です。

Q8. 認知症になると生前贈与はできなくなりますか?

贈与は本人の意思能力が前提です。判断能力が低下すると、有効な贈与契約を結べなくなるおそれがあります。そうした事態に備える手段として、家族信託が活用されることがあります。元気なうちに資産承継の道筋をつけておくことが大切です。詳しくは家族信託の費用と手順を解説した完全ガイドをご覧ください。

Q9. 贈与した実家の名義変更(登記)はいつまでにすればいい?

贈与による所有権移転登記には法律上の期限はありませんが、贈与の合意後すみやかに行うべきです。登記を放置すると権利関係が不明確になり、後のトラブルの原因になります。なお相続による登記は2024年4月から義務化されました。詳しくは相続登記義務化の解説記事をご参照ください。

Q10. 結局、暦年課税と精算課税のどちらを選べばいいですか?

ご家族の状況によります。目安として、相続まで長い期間が見込めて現金を計画的に渡したいなら暦年課税実家など大きな資産を確実に渡したいなら精算課税が検討対象になります。両者は組み合わせられないため(同一贈与者については)、選択は慎重に。当社では税理士と連携し、シミュレーションのうえご提案します。

✅ 本章のまとめ
☐ 暦年贈与の110万円は受贈者1人あたり、精算課税の110万円は毎年使え持ち戻し対象外
☐ 精算課税は同一贈与者について暦年課税へ戻せないため選択は慎重に
☐ 不動産贈与は移転コストが高く、相続有利のケースもあるため必ず試算を

第6章 ヘリテージリンクのアセットケアという選択肢

🎯 この章で解説すること
・当社アセットケアにおける生前贈与の位置づけ
・家族信託・遺言・相続対策との組合せ
・対応エリアとご相談の流れ

6-1. 生前贈与は「資産承継の全体設計」の一部です

ここまで見てきたとおり、生前贈与は単独で判断できるものではありません。暦年課税・精算課税・住宅資金特例のどれを選ぶか、相続で渡す方が有利でないか、小規模宅地等の特例や納税資金とどう整合させるか——これらは資産全体の承継設計のなかで一体的に考える必要があります。当社が「アセットケア」と呼ぶのは、まさにこの全体最適の視点です。

当社では、ご相談者様の不動産・金融資産を棚卸しし、相続税の試算、贈与と相続のコスト比較、納税資金の確保までを見渡したうえで、生前贈与をどう位置づけるかをご提案します。税理士・司法書士・弁護士といった提携専門家と連携し、税務・登記・法務の各面から検討できる体制を整えています。

6-2. 家族信託・遺言との組合せ

生前贈与は有力な手段ですが、万能ではありません。たとえば「今は名義を渡したくないが、将来の認知症に備えたい」という場合は家族信託が、「実家は確実に特定の子へ、それ以外は公平に分けたい」という場合は遺言が適していることもあります。当社では、贈与・信託・遺言を組み合わせ、ご家族の希望に沿った承継の形を一緒に設計します。

💡 ポイント
「生前贈与だけ」「家族信託だけ」と単独で考えると、思わぬ税負担や手続きの行き詰まりが生じることがあります。複数の手段を組み合わせて全体設計するのが、円滑な資産承継の鍵です。

6-3. 対応エリアとご相談の流れ

当社ヘリテージリンクは、東京・埼玉を中心に、不動産にまつわる相続・贈与のご相談を承っています。ご相談の流れは次のとおりです。

ご相談の流れ
☐ STEP1:お問い合わせ(フォームよりご連絡)
☐ STEP2:ヒアリング(実家や資産の状況、ご家族の希望をお伺いします)
☐ STEP3:現状の棚卸しと相続税の試算、贈与と相続のコスト比較
☐ STEP4:生前贈与・家族信託・遺言を含む承継プランのご提案
☐ STEP5:提携専門家と連携し、実行を支援

「実家をどう引き継ぐか考え始めたい」という段階からのご相談を歓迎しています。アセットケアに関するご相談は、下記の専用フォームよりお気軽にお寄せください。

▶ アセットケアの相談をする
✅ 本章のまとめ
☐ 生前贈与は資産承継の全体設計の一部として位置づけるのが有効
☐ 家族信託・遺言と組み合わせることで選択肢が広がる
☐ 当社は東京・埼玉を中心に、提携専門家と連携してアセットケアを提供

まとめ|改正を理解し、家族に合った方法を選ぶ

実家を子へ生前贈与する方法は、大きく「暦年課税」「相続時精算課税」「住宅取得等資金の非課税特例」の3つに整理できます。2024年改正により、暦年課税の生前贈与加算は最大7年へ延長され、相続時精算課税には年110万円の基礎控除が新設されました。どちらが有利かは、資産の種類・評価額・贈与者の年齢・家族構成によって変わります

とくに不動産は、贈与すると登録免許税2.0%や不動産取得税といった移転コストがかかり、相続で渡す方が総コストで有利になるケースも少なくありません。「贈与税ゼロ=得」と早合点せず、相続との比較、小規模宅地等の特例の可否、納税資金まで含めた全体での試算が欠かせません。個別の判断は、必ず税理士等の専門家にご確認ください。

当社ヘリテージリンクは、生前贈与を資産承継の全体設計の一部としてとらえ、家族信託や遺言とも組み合わせながら、ご家族に合った形をご提案します。「実家をどう引き継ぐか」でお悩みのオーナー様は、ぜひ一度ご相談ください。

▶ 無料相談を予約する

※本記事は2026年6月時点の法令・国税庁公表情報にもとづく一般的な解説です。税制は改正される場合があり、個別の適用可否や税額計算は税理士等の専門家へのご確認が必要です。主な出典:国税庁タックスアンサー No.4161(贈与財産の加算と税額控除)/No.4103(相続時精算課税の選択)/No.4408(贈与税の計算と税率)/No.4508(住宅取得等資金の贈与の非課税)、相続税法第19条・第21条の9、租税特別措置法第70条の2・第70条の3の2。

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