「相続税の納付期限が迫っているのに、手元に現金がない」——相続の現場では、こうした悩みが決して珍しくありません。相続財産の大半が実家や土地などの不動産で、預貯金がわずかしかない場合、評価額に応じて課される相続税を現金で一括納付することが大きな負担になることがあります。そうした場面で、金銭に代えて不動産などの「現物」で相続税を納める制度が物納(ぶつのう)です。

相続税は、原則として金銭で一括納付するのが基本です。それが難しい場合には、分割払いにあたる「延納」を検討し、それでもなお金銭での納付が困難なときに、最後の手段として物納が認められる、という順番になっています。物納は誰でも自由に選べる制度ではなく、一定の要件を満たし、納める財産にも順位や条件が定められています。

本記事では、相続税の物納について、延納との関係、物納が認められる要件、物納に充てられる財産の順位、物納できない「管理処分不適格財産」、評価の基準となる収納価額、そして「売却して金銭で納める」という選択肢との比較まで、相続税法をもとに順を追って整理していきます。不動産で相続税を納めることを検討している方が、全体像をつかむための手がかりとしてご活用ください。

💡 この記事でわかること
・相続税の物納とは何か、延納とどのような関係にあるのか
・物納が認められるための要件(金銭納付困難・延納が前提など)
・物納に充てられる財産の順位(不動産は第1順位)
・物納できない「管理処分不適格財産」と、事前に整えておくべき土地の条件
・収納価額の考え方と、「売却して納税」との比較のポイント
☐ こんな方に読んでいただきたい記事です
☐ 相続財産の大半が不動産で、相続税を現金で払えるか不安な方
☐ 「物納」という言葉は聞いたことがあるが、要件や手続きを知りたい方
☐ 延納と物納の違い、どちらを検討すべきか整理したい方
☐ 相続した土地を物納に充てられるか、条件を知りたい方
☐ 「売却して納税」と「物納」のどちらが有利か比べたい方

目次

第1章 相続税の物納とは?延納との関係を整理する
第2章 物納が認められるための4つの要件
第3章 物納できる財産の順位(不動産は第1順位)
第4章 物納できない「管理処分不適格財産」と土地の条件
第5章 収納価額と「売却して納税」との比較
第6章 手続きの流れ・期限とよくある質問(Q&A)
まとめ

🚨 重要な注意
本記事は2026年7月時点の一般的な情報提供を目的としたものです。物納の適用可否や収納価額の取り扱いは、個々の相続の内容や財産の状況によって大きく異なり、制度も複雑です。具体的な判断にあたっては、税理士や所轄の税務署へ必ずご確認ください。

第1章 相続税の物納とは?延納との関係を整理する

🎯 この章で解説すること
・物納の基本的な定義と、根拠となる相続税法の条文
・相続税の納付は「金銭一括→延納→物納」という順序で検討すること
・延納と物納の違いと、両者の関係

物納とは、相続税を金銭で納付することが困難な場合に、一定の相続財産(現物)そのものによって相続税を納める制度です。相続税法41条に定められており、現金の代わりに不動産や国債、上場株式などを国に納めることで、納税義務を果たす仕組みです。

📖 出典・条文
相続税法41条(物納)。相続税を金銭で納付することが困難とする事由がある場合において、納税義務者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として、一定の相続財産による物納を許可することができる、とされています。

ここで大切なのは、物納は相続税の納付方法として最後に検討される手段だという点です。相続税の納付には、大きく分けて次の3つの段階があります。まず、期限までに現金で一括して納める「金銭一括納付」が原則です。それが難しい場合に、分割して納める「延納」を検討します。そして、延納によっても金銭で納めることが困難なときに、はじめて物納という選択肢が視野に入ってきます。

納付方法は「金銭一括 → 延納 → 物納」の順で検討する

相続税の納付の大原則は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に、金銭で一括して納めることです。しかし、相続財産の多くが不動産で、預貯金だけでは相続税を払いきれないケースもあります。そうした場合に、いきなり物納が認められるわけではなく、まずは分割払いにあたる延納が検討されます。

段階 納付方法 位置づけ
第1段階 金銭一括納付 原則。期限までに現金で全額納める
第2段階 延納(分割払い) 一括が困難な場合に、年賦で分割して納める
第3段階 物納(現物納付) 延納によっても金銭納付が困難な場合の最後の手段

この順序が定められているため、物納を検討する際には、「金銭一括で払えないか」「延納なら払えないか」という点がまず問われます。延納でも払えない部分について、はじめて物納の対象となる、という関係にあります。

延納と物納の違い

延納は、相続税を一度に払えない場合に、担保を提供したうえで年賦(分割払い)で納めていく制度です。あくまで金銭で納める点は変わらず、支払いを先延ばしにして分割する仕組みで、分割期間に応じて利子税がかかります。これに対して物納は、金銭ではなく不動産などの現物そのもので納税する制度で、延納によっても金銭で納めることが困難な場合に検討されます。

⚠️ 注意
延納と物納は「どちらか好きな方を選べる」というものではありません。まず延納が検討され、延納によっても金銭で納付することが困難な金額の範囲内で、物納が認められるという関係です。どの方法が適しているかは、財産構成や資力によって個別に判断されるため、税理士や税務署に相談しながら進めることが大切です。
✅ 本章のまとめ
☑ 物納とは、相続税を金銭で納めるのが困難な場合に現物で納める制度(相続税法41条)
☑ 納付は「金銭一括→延納→物納」の順で検討し、物納は最後の手段
☑ 延納は分割払い、物納は現物納付で、両者は選択ではなく順序の関係にある

第2章 物納が認められるための4つの要件

🎯 この章で解説すること
・物納が許可されるために満たすべき主な要件
・「金銭納付が困難」「延納が前提」という考え方
・物納適格財産であること、期限内の申請という手続き要件

物納は、申請すれば必ず認められるものではありません。相続税法や関連する取り扱いのもとで、いくつかの要件を満たす必要があります。ここでは、物納を検討するうえで押さえておきたい主な要件を、大きく4つに整理して解説します。

要件1:金銭で納付することが困難であること

物納の出発点となる要件が、相続税を金銭で納付することが困難であることです。相続財産に加えて、納税義務者がもともと持っている資力なども踏まえ、現金で相続税を納めることが難しいと認められる必要があります。この「困難とする金額を限度として」物納が認められるため、金銭で払える部分については、原則として金銭で納めることになります。

たとえば、相続財産が実家の土地・建物と、わずかな預貯金だけで、相続税額が預貯金を大きく上回るようなケースでは、金銭での納付が困難と判断される余地があります。一方で、換価しやすい金融資産を十分に持っている場合には、まずそれを充てることが求められ、物納が認められにくくなる傾向があります。

要件2:延納によっても金銭納付が困難であること

第1章で触れたとおり、物納は延納の次に検討される制度です。そのため、延納によっても金銭で納付することが困難な金額の範囲内であることが要件となります。つまり、分割払いにすれば納められるのであれば、まず延納を選ぶことになり、それでも払いきれない部分についてのみ物納が認められる、という関係です。

延納には、担保の提供や利子税の負担が伴い、分割期間中に安定した収入があるかどうかも考慮されます。延納でも納付が難しいと見込まれる場合に、はじめて物納の検討段階に進みます。

要件3:物納に充てられる財産(物納適格財産)であること

物納に充てる財産は、何でもよいわけではありません。相続によって取得した財産のうち、物納に適した一定の財産であることが求められます。財産には順位が定められており(第3章で解説)、また、抵当権が付いている土地や境界が不明確な土地など、管理や処分に支障がある財産(管理処分不適格財産)は物納に充てられません(第4章で解説)。

このため、物納を検討する場合には、「その財産が物納に充てられる状態になっているか」を事前に確認・整備しておくことが重要になります。土地であれば、境界の確定や権利関係の整理が前提になることが少なくありません。

要件4:期限までに物納申請書を提出すること

物納を希望する場合は、相続税の納期限(申告期限)までに物納申請書などの必要書類を提出する必要があります。相続税の申告・納付期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内であり、この期限までに物納の申請を行うことが求められます。

📖 出典・条文
相続税法41条・42条ほか。物納の許可を求めようとする者は、納期限までに、物納を求めようとする税額や物納に充てようとする財産の種類・価額などを記載した申請書に一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署長に提出しなければならないとされています。
⚠️ 注意
物納の要件や必要書類は細かく定められており、期限も限られています。境界確定や書類の準備には時間がかかるため、物納を検討する場合は、相続の早い段階から税理士に相談し、スケジュールに余裕を持って進めることが大切です。

当社では、相続した不動産をお持ちの方に対し、提携する税理士・司法書士と連携しながら、物納を含めた納税方法の選択肢の整理や、土地の権利関係・境界の状況の確認などをお手伝いしています。「どの方法が現実的か」という段階からご相談いただけます。

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✅ 本章のまとめ
☑ 物納には「金銭納付が困難」「延納でも困難」という2つの前提がある
☑ 物納に充てる財産は、順位と条件を満たす物納適格財産である必要がある
☑ 申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月)までに物納申請書の提出が必要

第3章 物納できる財産の順位(不動産は第1順位)

🎯 この章で解説すること
・物納に充てられる財産に定められた順位
・不動産が第1順位であり、物納に充てやすいこと
・順位が定められている理由と、実務上の意味

物納に充てられる財産には、順位が定められています。上位の順位の財産があるうちは、原則として下位の財産を物納に充てることはできず、基本的には順位の高い財産から充てていく仕組みです。この順位を理解しておくと、自分の相続財産のうちどれが物納に充てやすいのかを把握しやすくなります。

順位 物納に充てられる主な財産
第1順位 不動産・船舶・国債証券・地方債証券・上場株式等
第2順位 非上場株式等(取引相場のない株式など)
第3順位 動産

表のとおり、不動産は第1順位に位置づけられています。国債や上場株式などと並んで、物納に最も充てやすい財産の一つです。相続財産の大半が土地・建物である場合に物納が検討されやすいのは、不動産が第1順位に含まれていることが背景にあります。

なぜ順位が定められているのか

物納で国に納められた財産は、最終的に国が管理し、必要に応じて売却(換価)されて国の収入になります。そのため、国としては管理や処分がしやすく、価値が把握しやすい財産を優先的に受け入れたいという事情があります。不動産・国債・上場株式などが第1順位とされているのは、こうした財産が比較的、価値の評価や処分がしやすいと考えられているためです。

逆に、取引相場のない非上場株式は、価値の評価や売却が難しいため第2順位とされ、一般的な動産はさらに下位の第3順位とされています。上位順位の財産を持っている場合には、原則としてそちらを先に物納に充てることになる点に注意が必要です。

不動産が第1順位であることの実務的な意味

不動産が第1順位に含まれることは、「相続財産が不動産に偏っていて現金が乏しい」という、物納がまさに必要とされる典型的なケースと相性がよいことを意味します。実家の土地や、活用の難しい遠方の土地などを物納に充てることで、手元の現金を残しながら納税を済ませられる可能性があるためです。

⚠️ 注意
不動産が第1順位だからといって、どの土地でも自由に物納できるわけではありません。次章で解説するとおり、抵当権が付いている、境界が不明確、共有になっている、といった土地は物納に充てられない場合があります。「第1順位=必ず物納できる」ではない点に注意が必要です。
✅ 本章のまとめ
☑ 物納財産には順位があり、上位の財産から充てるのが原則
☑ 不動産は第1順位で、国債・上場株式などと並んで物納に充てやすい
☑ ただし第1順位でも、物納できる状態かどうかは土地ごとの条件による

第4章 物納できない「管理処分不適格財産」と土地の条件

🎯 この章で解説すること
・物納に充てられない「管理処分不適格財産」とは何か
・物納できない土地の代表例(抵当権・境界未確定・共有・争いなど)
・物納を見据えて、事前に整えておくべき準備

不動産が第1順位であっても、国が管理・処分するうえで支障がある財産は物納に充てることができません。こうした財産を管理処分不適格財産といいます。物納を検討する際には、まず自分の土地がこの管理処分不適格財産に該当しないかを確認することが出発点になります。

物納できない土地の代表例

管理処分不適格財産とされる土地には、いくつかの典型例があります。代表的なものを整理すると、次のようになります。

物納が難しい土地の例 理由(一般的な考え方)
抵当権など担保権が付いている土地 権利関係が付着し、国が処分しにくいため
境界が明らかでない土地 範囲が確定せず、管理・処分に支障があるため
共有になっている不動産 単独で処分できず、権利関係が複雑なため(例外あり)
権利の帰属について争いがある土地 所有関係が確定しておらず引き受けが難しいため
借地権など他人の権利が設定された土地 利用や処分が制約されるため

たとえば、抵当権が付いたままの土地は、その担保権を抱えたまま国が引き受けることになり、処分の妨げになるため、原則として物納には充てられません。また、境界が確定していない土地も、どこまでが対象の土地なのかが不明確なため、物納に充てるには境界を確定させておくことが前提となります。

共有になっている不動産については、共有者全員がその持分を物納する場合など一定の例外を除き、単独では物納に充てにくいとされています。権利の帰属について相続人間で争いがある土地も、所有関係が定まっていないため、物納の対象とすることは難しくなります。

物納を見据えた事前の準備

これらの条件を裏返すと、物納を検討するうえでは、土地を「物納に充てられる状態」に整えておくことが重要だと分かります。具体的には、境界の確定(確定測量)や、権利関係の整理が前提になることが多くあります。抵当権が残っている場合はその抹消、共有状態であれば持分の整理など、事前に手当てが必要になるケースがあります。

土地の境界確定については、隣地所有者との立会いや測量が必要となり、一定の時間と費用がかかります。物納の申請期限は相続税の納期限までと限られているため、こうした準備は相続の早い段階から着手しておくことが望ましいといえます。境界確定の詳しい手順や費用については、当社の確定測量に関する解説記事もあわせてご参照ください。

⚠️ 注意
どの土地が管理処分不適格財産に該当するか、また、どこまで整備すれば物納に充てられるかは、土地の状況によって個別に判断されます。「物納できるつもりだったのに要件を満たしていなかった」という食い違いを避けるためにも、早い段階で税理士や税務署に確認しておくことが重要です。

当社では、相続した土地の売却・活用をご検討の方に対し、境界や権利関係の状況を確認し、物納に向けた整備が現実的かどうかも含めて、提携する専門家と連携しながら整理のお手伝いをしています。まずは現状の把握からご相談いただけます。

✅ 本章のまとめ
☑ 管理・処分に支障のある「管理処分不適格財産」は物納に充てられない
☑ 抵当権・境界未確定・共有・権利の争いなどがある土地は物納が難しい
☑ 境界確定や権利関係の整理など、事前の準備を早めに進めることが重要

第5章 収納価額と「売却して納税」との比較

🎯 この章で解説すること
・物納で財産が評価される「収納価額」の考え方
・物納が有利になり得るケースと、そうでないケース
・「売却して金銭で納税」という選択肢との比較の視点

物納を検討するうえで欠かせないのが、収納価額という考え方です。物納では、財産をいくらとして評価して国に納めるのかが重要になります。この評価額の基準が収納価額であり、物納が有利かどうかを判断する大きなポイントになります。

収納価額は原則として相続税評価額

物納に充てる財産の収納価額は、原則として相続税評価額とされています。土地であれば、路線価などに基づいて算定された相続税評価額が、そのまま物納で納める際の価額になるのが基本です。つまり、相続税の計算に用いた評価額で、その財産を国に納めるイメージです。

📖 出典・条文
相続税法43条ほか。物納財産の収納価額は、原則として課税価格計算の基礎となったその財産の価額(相続税評価額)によるとされています。ただし、収納の時までに財産の状況に一定の変化があった場合などには、例外的な取り扱いが定められています。

ここがポイントで、土地の相続税評価額は、路線価をもとに算定されるため、一般に実際の市場価格(時価)よりもやや低めに設定される傾向があるといわれます。しかし、立地や形状によっては、相続税評価額が市場価格より高くなっているケースもあります。こうした土地では、市場で売却するよりも相続税評価額のまま物納したほうが有利になる場合がある、と考えられています。

「売却して納税」と比較する視点

相続税を不動産がらみで納める方法としては、物納のほかに、その不動産を売却して現金化し、その現金で相続税を納めるという選択肢があります。むしろ、実務ではこちらの「売却して納税」が基本とされ、物納は最後の手段と位置づけられています。

比較項目 物納 売却して納税
納める形 不動産などの現物そのもの 売却代金(現金)
評価の基準 原則として相続税評価額 実際の売却価格(市場価格)
有利になりやすい場面 相続税評価額が市場価格より高い土地 市場価格が相続税評価額より高い土地
手続きの性質 要件が厳格で審査に時間がかかる傾向 買主が見つかれば比較的進めやすい

一般的には、市場で売れる土地であれば、売却して得た現金で相続税を納めるほうが手続きがスムーズで、手元に差額が残る可能性もあります。一方、売却が難しい土地や、相続税評価額が市場価格を上回るような土地では、物納のほうが結果的に有利になるケースもあり得ます。どちらが適しているかは、土地の性質と評価額・市場価格の関係によって変わってきます。

⚠️ 注意
物納が有利か、売却して納税するほうが有利かは、土地ごとの評価額・市場価格・売却のしやすさなどによって個別に異なります。「相続税評価額が高いから必ず物納が得」とは限りません。売却時の譲渡所得税なども含めた総合的な比較が必要になるため、税理士に試算してもらうことをおすすめします。

当社では、相続した不動産について、市場でどの程度の価格で売却が見込めるかの査定を行っています。「売却して納税する場合の見込み額」を把握しておくことは、物納と比較するうえでの重要な材料になります。まずは無料査定で、売却した場合の目安を確認してみてはいかがでしょうか。

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✅ 本章のまとめ
☑ 物納の収納価額は原則として相続税評価額(路線価等)による
☑ 相続税評価額が市場価格より高い土地では物納が有利になるケースがある
☑ 実務では「売却して納税」が基本。土地ごとに両者を比較して判断することが重要

第6章 手続きの流れ・期限とよくある質問(Q&A)

🎯 この章で解説すること
・物納申請から許可までの大まかな流れと期限
・物納が最終手段とされる背景(近年の許可状況)
・物納について実務でよく寄せられる疑問への回答

物納の手続きは、①物納申請書などの提出 → ②税務署による審査 → ③許可(または却下)という流れで進みます。まず、相続税の納期限(相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)までに、物納申請書と必要書類を所轄の税務署長に提出します。その後、税務署が財産の状況や要件を審査し、要件を満たすと認められれば物納が許可されます。

審査の過程では、物納に充てる財産が管理処分不適格財産に該当しないか、境界や権利関係が整っているかなどが確認されます。不備があれば補完を求められることもあり、許可までには一定の時間を要するのが一般的です。

物納は「最後の手段」——近年の状況

近年は物納の要件が厳格に運用されており、物納が許可される件数は多くないといわれています。その背景には、まず金銭一括納付・延納が優先されること、管理処分不適格財産にあたる土地が物納から除かれること、そして実務上は「売却して金銭で納付する」方法が基本とされていることがあります。

このため、相続税の納付にあたっては、まず売却による納税を検討し、それでも難しい場合に物納を視野に入れるというのが現実的な進め方といえます。物納はあくまで最終手段であり、「不動産で払えるから安心」と安易に考えるのではなく、売却の可能性とあわせて比較検討することが大切です。

Q1.相続税は、いつまでに納めればよいのですか?

相続税の申告・納付期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。物納を希望する場合も、この納期限までに物納申請書などを提出する必要があります。境界確定などの準備に時間がかかることを考えると、早い段階から着手しておくことが重要です。

Q2.物納すれば、相続税を現金で用意しなくてよいのですか?

物納が認められれば、その財産で納税義務を果たすことになります。ただし、物納が認められるのは「金銭で納付することが困難な金額を限度」とされており、金銭で払える部分は原則として金銭で納めることになります。また、延納によって納付できる場合はまず延納が検討されるため、「現金がないから当然に物納できる」というわけではありません。

Q3.抵当権が付いた土地でも物納できますか?

抵当権など担保権が付いている土地は、原則として管理処分不適格財産にあたり、そのままでは物納に充てられません。物納を検討する場合は、抵当権の抹消など、権利関係を整理したうえで申請することが前提になります。個別の可否は税務署や税理士にご確認ください。

Q4.物納と売却、どちらを選ぶべきですか?

一般的には、市場で売れる土地であれば売却して現金で納税するほうがスムーズで、実務でも基本とされています。一方、売却が難しい土地や、相続税評価額が市場価格を上回る土地では、物納が有利になるケースもあります。土地ごとの評価額・市場価格・売却のしやすさによって異なるため、売却時の査定額を把握したうえで、税理士と比較検討することをおすすめします。

Q5.物納の相談は、どこにすればよいですか?

物納の可否や収納価額の判断は専門的で複雑なため、まずは相続に詳しい税理士や、所轄の税務署に相談することをおすすめします。土地の境界・権利関係の整備や、売却との比較が必要な場合は、不動産の実務に詳しい窓口とあわせて相談すると、全体像を整理しやすくなります。

✅ 本章のまとめ
☑ 物納は「申請→審査→許可」の流れで進み、納期限(10ヶ月)までの申請が必要
☑ 近年は要件が厳格で許可件数は多くなく、実務では売却による納税が基本
☑ 物納は最終手段。売却の見込みとあわせて比較検討することが大切

まとめ

相続税の物納は、相続税を金銭で納めることが困難な場合に、不動産などの現物で納める制度です(相続税法41条)。ただし、誰でも自由に選べるものではなく、「金銭一括→延納→物納」という順序のもとで、延納によっても金銭納付が困難な金額の範囲で認められる、最後の手段です。

物納に充てられる財産には順位があり、不動産は第1順位で物納に充てやすい一方、抵当権が付いている・境界が不明確・共有・権利に争いがあるといった土地は「管理処分不適格財産」として物納に充てられません。物納を検討するには、境界確定や権利関係の整理を早めに進めておくことが前提になります。また、収納価額は原則として相続税評価額であり、この評価額と市場価格の関係によって、物納と「売却して納税」のどちらが有利かが変わってきます。

💡 本記事の要点(3つ)
① 物納は「金銭一括→延納→物納」の順で検討される最後の手段(相続税法41条)
② 不動産は第1順位だが、抵当権・境界未確定・共有などの土地は物納に充てられない
③ 収納価額は原則相続税評価額。実務では「売却して納税」が基本で、土地ごとの比較が重要

物納は制度としては用意されているものの、要件が厳格で、実務では売却による納税が基本とされています。相続税の納付を不動産で乗り切ろうとする場合でも、まずは「売却したらいくらになるのか」を把握することが、物納と比較するうえでの第一歩になります。当社では、相続した不動産の無料査定や、納税方法の整理に関する無料相談を承っています。「現金で相続税を払えるか不安」という段階でも、まずは現状の整理からお手伝いいたしますので、お気軽にお問い合わせください。

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🚨 免責事項
本記事は2026年7月時点の法令・制度をもとにした一般的な情報提供であり、個別の相続税の納付方法や物納の可否、収納価額を保証するものではありません。物納の適用可否、要件の充足、収納価額の取り扱い、売却と物納のいずれが有利かといった判断は、個々のご事情によって大きく異なります。具体的な手続きにあたっては、税理士・税務署・司法書士等の専門家へ必ずご確認ください。

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