「配偶者が相続する分には、相続税はほとんどかからないと聞いたのですが、本当ですか」——ご主人やご家族を亡くされた方から、当社にも数多く寄せられるご質問です。たしかに相続税には、残された配偶者の負担を大きく軽くする配偶者の税額軽減(いわゆる配偶者控除)という制度があります。配偶者が取得した遺産のうち、一定額までなら相続税がかからないという、非常に手厚い仕組みです。

この制度では、配偶者が取得した遺産について、①1億6,000万円②配偶者の法定相続分相当額の、いずれか多い金額までは相続税がかからないとされています。つまり、遺産が1億6,000万円以内であれば、配偶者が全部相続しても相続税は0になる計算になるケースもあり、それ以上の遺産でも法定相続分までなら非課税になり得る、という強力な軽減措置です。

ただし、この制度には見落とされがちな落とし穴があります。「配偶者は非課税なのだから、とりあえず全部お母さんが相続しておこう」と安易に判断すると、次にその配偶者が亡くなったときの相続——二次相続で、子どもの相続税が思わぬ形で膨らんでしまうことがあるのです。本記事では、配偶者の税額軽減の仕組みと要件を整理したうえで、数値例を使いながら「使いすぎ」に注意すべき理由と、一次・二次を通した考え方まで丁寧に解説していきます。

💡 この記事でわかること
・配偶者の税額軽減(配偶者控除)で、どこまで相続税がかからないのか(1.6億円 or 法定相続分)
・制度を使うための要件(戸籍上の配偶者・遺産分割の確定・申告の必要性)
・数値例で見る、実際にどれくらい相続税が軽くなるのかのイメージ
・配偶者控除を使いすぎると二次相続で子の負担が増える「落とし穴」
・一次相続と二次相続をトータルで考える視点と、専門家への相談のタイミング
☐ こんな方に読んでいただきたい記事です
☐ 配偶者を亡くし、これから相続税の申告を控えている方
☐ 「配偶者が相続すれば税金がかからない」と聞いて、遺産分割の方針を考えている方
☐ 母(父)に多めに相続してもらおうか迷っているご家族
☐ 二次相続まで見据えて、損をしない分け方を知っておきたい方
☐ 不動産が遺産の大半を占めていて、分け方に悩んでいる方

目次

第1章 配偶者の税額軽減(配偶者控除)とは(1.6億円 or 法定相続分)
第2章 適用の要件(戸籍上の配偶者・遺産分割の確定・申告の必要性)
第3章 数値例で見る軽減額——どれくらい税金が軽くなるのか
第4章 二次相続の落とし穴——配偶者控除の「使いすぎ」に注意
第5章 一次相続・二次相続をトータルで考える
第6章 よくある質問(Q&A)
まとめ

🚨 重要な注意
本記事は2026年7月時点の一般的な情報提供を目的としたものです。相続税の実際の税額や、配偶者の税額軽減をどこまで使うのが有利かは、ご家庭の遺産の内容・金額・相続人の構成・配偶者ご自身の財産・二次相続の見通しによって大きく異なり、一律の正解はありません。本記事の数値例はあくまで仕組みを理解するための簡略化したイメージであり、具体的な税額の計算や有利・不利の判断は、必ず税理士等の専門家へご確認ください。

第1章 配偶者の税額軽減(配偶者控除)とは(1.6億円 or 法定相続分)

🎯 この章で解説すること
・配偶者の税額軽減とは何か、なぜ設けられているのか
・非課税になる金額のルール(1.6億円 or 法定相続分のいずれか多い方)
・「配偶者控除」という通称と、正式な制度名の関係

配偶者の税額軽減とは、相続や遺贈によって配偶者が取得した遺産について、一定額までは相続税がかからないようにする制度です。一般には「配偶者控除」と呼ばれることも多いですが、相続税法上の正式な名称は配偶者の税額軽減であり、所得税の配偶者控除とはまったく別の制度です。この記事では、わかりやすさのために「配偶者の税額軽減(配偶者控除)」と併記していきます。

この制度が設けられている背景には、大きく二つの理由があるとされています。ひとつは、残された配偶者のその後の生活を保障するという趣旨です。長年連れ添った夫婦の財産は、夫婦が協力して築いてきたものであり、その一方が亡くなったときに、残された配偶者の生活基盤まで相続税で削ってしまうのは酷である、という考え方です。もうひとつは、同一世代内の財産移転には配慮するという趣旨で、配偶者が相続した財産は、いずれ次の相続(二次相続)で改めて課税される機会があるため、一次相続の段階では税負担を軽くしておこう、という発想です。

非課税になるのは「1.6億円」か「法定相続分」の多い方まで

配偶者の税額軽減で相続税がかからなくなる金額の上限は、①1億6,000万円②配偶者の法定相続分相当額の、いずれか多い金額までとされています。この「いずれか多い方」という点が、この制度を非常に手厚いものにしています。

📖 出典・条文
相続税法19条の2/国税庁タックスアンサー No.4158「配偶者の税額軽減」。被相続人の配偶者が取得した遺産のうち、課税価格の合計額に配偶者の法定相続分を掛けた金額か、1億6,000万円の、いずれか多い金額までに対応する相続税額が軽減されるとされています。これにより、配偶者が実際に取得した遺産がこの範囲内であれば、配偶者に相続税がかからない結果となる場合があります。

たとえば、遺産の総額が1億6,000万円以内であれば、配偶者がそのすべてを相続しても、①の1億6,000万円の枠に収まるため、配偶者に相続税がかからない計算になるケースがあります。一方、遺産が数億円と大きく、配偶者の法定相続分(配偶者と子が相続人なら2分の1)が1億6,000万円を超える場合には、②の法定相続分相当額まで非課税になり得ます。いずれにしても、配偶者が受け取る遺産の多くの部分が非課税の対象になり得る、というのが、この制度の大きな特徴です。

⚠️ 注意
ここで軽減されるのは、あくまで配偶者が実際に取得した遺産に対応する相続税です。「配偶者がいれば、家族全体で1.6億円が非課税になる」という意味ではありません。配偶者が取得しなかった遺産(子が相続した分など)には、通常どおり相続税がかかります。また、非課税の枠を使うには、原則として配偶者が実際にその遺産を取得している必要があります。
✅ 本章のまとめ
☑ 配偶者の税額軽減は、残された配偶者の生活保障などのために設けられた手厚い制度
☑ 「1億6,000万円」と「配偶者の法定相続分相当額」の、いずれか多い金額までが非課税の目安
☑ 軽減されるのは配偶者が実際に取得した遺産に対応する税額で、家族全体の非課税枠ではない

第2章 適用の要件(戸籍上の配偶者・遺産分割の確定・申告の必要性)

🎯 この章で解説すること
・対象となる「配偶者」の範囲(戸籍上の配偶者に限られる)
・遺産分割が確定していることという原則と、未分割の場合の救済
・税額が0になる場合でも「相続税の申告」が必要になる理由

配偶者の税額軽減は非常に有利な制度ですが、無条件で使えるわけではありません。ここでは、実務でとくに重要になる三つの要件——①戸籍上の配偶者であること、②遺産分割が確定していること、③相続税の申告をすること——を順に確認していきます。

要件1:戸籍上の配偶者であること(内縁は対象外)

この制度の対象となる「配偶者」は、婚姻の届出をした、戸籍上の配偶者に限られます。長年一緒に暮らし、実質的に夫婦同然の関係であっても、婚姻届を出していない内縁関係(事実婚)の相手は対象外とされています。相続税の世界では、婚姻の届出があるかどうかが明確な線引きになっている点に注意が必要です。

なお、婚姻期間の長さは問われないとされています。婚姻から日が浅くても、戸籍上の配偶者であれば制度の対象になり得ます。ただし、税負担の軽減だけを目的とした形式的な婚姻とみなされるような極端なケースでは、取扱いが問題となることも考えられます。個別の事情はご不安であれば専門家にご確認ください。

要件2:相続税の申告期限までに遺産分割が確定していること

配偶者の税額軽減は、原則として、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)までに、配偶者が取得する遺産が遺産分割によって確定していることが必要とされています。「配偶者が実際に取得した遺産」に対して軽減が適用される仕組みのため、誰が何を取得するかが決まっていない状態では、原則として軽減を受けられないのです。

では、相続人どうしの話し合い(遺産分割協議)がまとまらず、申告期限までに分け方が決まらない場合はどうなるのでしょうか。この場合でも、救済の仕組みが用意されています。申告期限までに「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して、いったん未分割の状態で相続税の申告・納税をしておけば、原則として申告期限から3年以内に遺産分割が確定した時点で、あらためて配偶者の税額軽減を適用できるとされています。

📖 出典・条文
相続税法19条の2第2項/国税庁タックスアンサー No.4158。申告期限までに分割されていない財産は原則として税額軽減の対象になりませんが、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出し、実際に3年以内に分割が行われた場合には、分割後に更正の請求等を行うことで税額軽減の適用を受けられるとされています。やむを得ない事情でさらに時間がかかる場合の取扱いも定められています。

要件3:税額が0になる場合でも「相続税の申告」が必要

とくに誤解が多いのがこの点です。配偶者の税額軽減を使った結果、相続税の納税額が0円になる場合であっても、相続税の申告そのものは必要とされています。「税金がかからないなら、申告もいらないのでは」と考えてしまいがちですが、この軽減は申告をして初めて適用される制度だからです。

つまり、申告をしなければ軽減も受けられず、結果として本来かからなかったはずの相続税を課される、という事態にもなりかねません。「配偶者が相続したから税金は0のはずだ」と自己判断して申告をしないでいると、思わぬトラブルにつながる可能性があります。納税額が0でも、期限内にきちんと申告することが、この制度を使う大前提だと押さえておきましょう。

当社では、相続した不動産の評価や売却のご相談を入り口に、提携する税理士と連携しながら、こうした申告手続きの流れも含めてワンストップでサポートしています。「何から手をつければよいのか分からない」という段階から、お気軽にご相談ください。

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✅ 本章のまとめ
☑ 対象は戸籍上の配偶者に限られ、内縁関係(事実婚)は対象外
☑ 原則は申告期限(10ヶ月)までに遺産分割の確定が必要。未分割でも「3年以内の分割見込書」で後日適用の道がある
☑ 軽減で税額が0になる場合でも、相続税の申告そのものは必要

第3章 数値例で見る軽減額——どれくらい税金が軽くなるのか

🎯 この章で解説すること
・遺産2億円のケースで、配偶者控除がどのように効くのか
・「1.6億円」が効くケースと「法定相続分」が効くケースの違い
・数値例はあくまで仕組み理解のためのイメージであること

言葉だけではイメージしにくいので、簡単な数値例で配偶者の税額軽減の効き方を見てみます。なお、実際の相続税は基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いたうえで、法定相続分に応じて税率を掛けて計算するなど手順が複雑です。ここでは制度の効き方をつかむための簡略化したイメージとして捉えてください。正確な税額は税理士の計算が必要です。

ケースA:遺産2億円・相続人が配偶者と子2人

遺産の総額が2億円、相続人が配偶者と子2人だとします。この場合の配偶者の法定相続分は2分の1なので、法定相続分相当額は1億円です。一方、配偶者控除の枠は「①1.6億円」と「②法定相続分(1億円)」のいずれか多い方なので、この例では①の1億6,000万円が上限になります。

項目 内容
遺産総額 2億円
相続人 配偶者+子2人
配偶者の法定相続分 2分の1(=1億円)
配偶者控除の枠(①と②の多い方) 1億6,000万円(①が適用)
配偶者が1.6億円を取得した場合 その1.6億円に対応する相続税が軽減され、配偶者の負担は0になり得る
子2人が残り0.4億円を取得した場合 その部分には通常どおり相続税がかかる

このケースで、仮に配偶者が1億6,000万円分の遺産を取得すると、その1.6億円は配偶者控除の枠内に収まるため、配偶者が負担する相続税は0になり得ます。残りの4,000万円を子2人が取得した部分については、通常どおり相続税がかかります。このように、配偶者が多めに取得すれば、一次相続の段階での家族全体の相続税を大きく圧縮できるのが分かります。

ケースB:遺産5億円・配偶者の法定相続分が1.6億円を超える

では、遺産がさらに大きい場合はどうでしょうか。遺産の総額が5億円、相続人が配偶者と子2人だとすると、配偶者の法定相続分(2分の1)は2億5,000万円です。この場合は「①1.6億円」よりも「②法定相続分(2.5億円)」のほうが多いため、②の2億5,000万円が配偶者控除の上限になります。

つまり、配偶者が2億5,000万円までの遺産を取得しても、その部分に対応する相続税は軽減の対象になり得るということです。「配偶者控除は1.6億円まで」と覚えている方も多いのですが、正確には遺産が大きく法定相続分が1.6億円を超えるケースでは、法定相続分まで非課税になり得る点を押さえておくと、より正確な理解につながります。

⚠️ 注意
ここで示した金額は、あくまで「非課税になり得る遺産の枠」を分かりやすく示したイメージです。実際の軽減額は、相続税の総額に対して、配偶者が取得した課税価格の割合などを反映して計算されるため、「枠の金額=そのまま非課税」という単純な話ではありません。必ず税理士の試算で、ご家庭の実際の数字を確認してください。
✅ 本章のまとめ
☑ 遺産2億円・配偶者と子2人なら、配偶者控除の枠は1.6億円(①が適用)
☑ 遺産5億円のように法定相続分が1.6億円を超えるケースでは、法定相続分(2.5億円など)まで非課税になり得る
☑ 数値例は仕組み理解のためのイメージで、正確な軽減額は税理士の計算が必要

第4章 二次相続の落とし穴——配偶者控除の「使いすぎ」に注意

🎯 この章で解説すること
・一次相続と二次相続とは何か
・配偶者に寄せすぎると、なぜ二次相続で子の負担が増えるのか
・数値イメージで見る「使いすぎ」のリスク

ここからが、この記事でもっとも大切なポイントです。配偶者の税額軽減はたしかに強力ですが、目先の相続税を0にしたいからと、配偶者に遺産を寄せすぎると、その配偶者が次に亡くなったときの相続で、子どもの相続税負担がかえって重くなってしまうことがあります。

一次相続と二次相続

たとえば、父・母・子という家族で、まず父が亡くなる相続を一次相続、その後に母が亡くなる相続を二次相続と呼びます。一次相続では、配偶者である母が配偶者控除を使えるため、母が多く相続すれば相続税を大きく抑えられます。しかし二次相続、つまり母が亡くなったときの相続では、もう配偶者はいません。配偶者控除を使える人がいないため、母が持っていた財産に、そのまま相続税がかかることになります。

さらに、二次相続では次の二つの理由から、税負担が重くなりやすいとされています。ひとつは、相続人が1人減ることが多いこと。一次相続では母と子で相続人が複数いましたが、二次相続では子だけになり、法定相続人の数が減るため基礎控除(3,000万円+600万円×人数)も小さくなります。もうひとつは、母がもともと持っていた財産(母自身の預貯金や、父から相続した財産)がそのまま子に引き継がれ、課税対象が積み上がりやすいことです。

数値イメージ:一次で寄せすぎると二次で膨らむ

仕組みを大まかにつかむために、簡略化した数値イメージで比べてみます。父の遺産が1億6,000万円、相続人は母と子1人、母自身にも別途4,000万円の財産があり、最終的には子1人がすべてを引き継ぐと仮定します。(税額は概算のイメージで、実際の計算とは異なります。)

分け方 一次相続(父の相続) 二次相続(母の相続) 一次+二次の考え方
パターン①:母が全額(1.6億円)相続 配偶者控除で母の相続税は0に近づく 母の財産は「相続分1.6億+元の0.4億=2億円」に。配偶者控除は使えず、子1人に重く課税されやすい 一次は軽いが二次が重くなりやすい
パターン②:母と子で分けて相続 子の取得分には一次で相続税がかかる 母の財産が抑えられる分、二次の課税対象が小さくなりやすい 一次・二次を合計すると軽くなる場合がある

パターン①のように、一次相続で配偶者控除を最大限使って母に全額を寄せると、そのときの相続税は大きく抑えられます。しかし母が亡くなる二次相続では、母が相続した1.6億円に、母自身の財産4,000万円が上乗せされた約2億円が、配偶者控除の使えない状態で子1人に課税されやすくなります。相続人が1人で基礎控除も小さいため、二次相続の税負担が一気に膨らむことがあるのです。

一方、パターン②のように一次相続の段階である程度子にも相続させておくと、一次相続では相続税がかかるものの、母に集まる財産が抑えられる分、二次相続の課税対象が小さくなります。その結果、一次と二次を合計した相続税は、パターン②のほうが少なくなるケースがあるというのが、配偶者控除の「使いすぎ」に注意すべき理由です。

🚨 ここが落とし穴
「配偶者は非課税だから、とりあえず全部お母さんに」という分け方は、一次相続だけを見れば正解に見えても、二次相続まで含めると損をしてしまうことがあります。とくに、配偶者自身にもまとまった財産がある場合や、子が1人の場合は、この影響が大きく出やすいとされています。目先の税額0に飛びつく前に、二次相続を見据えた検討が欠かせません。
✅ 本章のまとめ
☑ 二次相続では配偶者控除が使えず、相続人が減って基礎控除も小さくなり、税負担が重くなりやすい
☑ 一次相続で配偶者に寄せすぎると、二次相続で子の負担がかえって膨らむことがある
☑ 配偶者自身に財産がある場合や子が1人の場合は、とくに「使いすぎ」に注意

第5章 一次相続・二次相続をトータルで考える

🎯 この章で解説すること
・「一次と二次を通算して最適化する」という考え方
・不動産が遺産の中心の場合に気をつけたいこと
・専門家(税理士)に試算を依頼すべきタイミング

第4章で見たとおり、配偶者の税額軽減は、一次相続だけを見て判断すると、二次相続で思わぬ負担を招くことがあります。そこで大切になるのが、一次相続と二次相続を一つのつながった流れとしてとらえ、両方を合計した相続税が小さくなるように分け方を考えるという視点です。

「配偶者にいくら寄せるか」を二次相続まで見て決める

具体的には、「配偶者控除の枠いっぱいまで配偶者に相続させる」のではなく、配偶者自身がもともと持っている財産や、配偶者の年齢・今後の生活費、子の人数などをふまえて、一次相続で配偶者にどこまで寄せるかを調整することが有効な場合があります。配偶者に集める財産を抑えれば、そのぶん一次相続の税額は増えますが、二次相続の負担が軽くなり、トータルでは得になることがあるためです。

もっとも、これは「必ず分散させたほうが得」という単純な話ではありません。配偶者自身の財産が少なく、遺産もそれほど大きくない場合には、配偶者控除をしっかり使って一次相続で配偶者に寄せたほうが、トータルでも有利になるケースもあります。最適な分け方は、遺産の額・配偶者の財産・相続人の構成・二次相続までの見通しによって変わるため、一律の正解はありません。

不動産が遺産の中心の場合に気をつけたいこと

遺産の大半が自宅や賃貸物件などの不動産で占められている場合には、さらに注意が必要です。不動産は現金のように簡単に分けられないため、「二次相続まで考えて配偶者の取得分を調整したい」と思っても、そもそも分けにくいという問題に直面します。

また、配偶者が自宅を相続する場合には、一定の要件のもとで土地の相続税評価を大きく下げられる小規模宅地等の特例が使えることもあり、配偶者控除と組み合わせると一次相続の負担を大きく抑えられる可能性があります。一方で、その自宅を最終的に誰がどう引き継ぎ、いつ売却するのかによって、二次相続や譲渡時の税金まで含めた損得が変わってきます。不動産がからむ相続は、税と分割の両面から立体的に考える必要があるのです。

当社は、相続不動産の評価や売却の実務を数多く手がけており、「この不動産をどう分け、いつ売るのが家族全体にとって良いのか」という視点から、提携する税理士・司法書士と連携してご相談を承っています。一次・二次を見据えた不動産の扱いに悩まれている方は、ぜひ一度ご相談ください。

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税理士に「一次・二次通算」の試算を依頼する

ここまで繰り返し述べてきたとおり、配偶者の税額軽減をどこまで使うのが有利かは、ご家庭ごとの数字を入れて計算してみないと判断できません。そこでおすすめしたいのが、税理士に「配偶者に寄せた場合」と「分散させた場合」の、一次・二次を合計した相続税をそれぞれ試算してもらうことです。数字で比較できれば、感覚に頼らず、納得のいく分け方を選べます。

相続税の申告期限は10ヶ月と、意外と短いものです。遺産分割の方針を決め、必要な試算を行い、申告書を整えるには、早めに動き出すに越したことはありません。「配偶者控除があるから大丈夫」と安心して先延ばしにせず、二次相続まで見据えた検討を、余裕をもって始めておくことをおすすめします。

✅ 本章のまとめ
☑ 一次と二次を合計した相続税が小さくなるよう、配偶者への寄せ方を調整するのが基本の考え方
☑ ただし「分散が常に得」ではなく、遺産や配偶者の財産次第で最適解は変わる
☑ 不動産中心の相続はとくに複雑。税理士に一次・二次通算の試算を依頼するのが確実

第6章 よくある質問(Q&A)

🎯 この章で解説すること
・配偶者の税額軽減について実務でよく寄せられる疑問への回答
・申告・分割・二次相続にまつわる素朴な質問の整理

Q1.配偶者が相続すれば、相続税は必ず0になりますか?

必ず0になるわけではありません。非課税になるのは「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」の、いずれか多い金額までに対応する部分です。配偶者がこの枠を超えて遺産を取得すれば、超えた部分には相続税がかかります。また、軽減されるのは配偶者が取得した部分の税額であり、子が取得した遺産には通常どおり相続税がかかります。

Q2.税額が0になるなら、申告はしなくてよいですか?

いいえ、申告は必要です。配偶者の税額軽減は、相続税の申告をして初めて適用される制度です。この軽減を使った結果として納税額が0円になる場合でも、期限内(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)に相続税の申告書を提出する必要があります。申告を怠ると軽減が受けられず、本来不要だった相続税を課される可能性があります。

Q3.遺産分割が申告期限までにまとまりそうにありません。

申告期限までに分割が確定しない場合でも、いったん未分割の状態で申告・納税をしたうえで、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、原則として、その後3年以内に分割が確定した時点で、あらためて配偶者の税額軽減を適用できるとされています。この手続きを忘れると、後から軽減を受けられなくなるおそれがあるため、税理士に確認しながら進めると安心です。

Q4.内縁の妻(夫)でも配偶者控除は使えますか?

使えません。配偶者の税額軽減の対象となる配偶者は、婚姻の届出をした戸籍上の配偶者に限られます。長年連れ添った事実婚のパートナーであっても、婚姻届が出ていない内縁関係では対象外とされています。この点は相続全般にかかわるため、事実婚の方は生前対策も含めて早めに専門家へ相談することをおすすめします。

Q5.二次相続が心配です。何から考えればよいですか?

まずは、配偶者ご自身がどれくらいの財産を持っているかと、お子さんの人数を整理してみてください。配偶者自身の財産が多いほど、また子が少ないほど、二次相続の負担は重くなりやすい傾向があります。そのうえで、税理士に「配偶者に寄せた場合」と「分散した場合」の一次・二次を通算した試算を依頼すると、ご家庭にとって無理のない分け方が見えてきます。不動産がからむ場合は、当社のような相続不動産の専門会社にもあわせてご相談ください。

✅ 本章のまとめ
☑ 配偶者控除は「1.6億円 or 法定相続分」までで、超えた分や子の取得分には相続税がかかる
☑ 税額が0でも申告は必要。未分割なら「3年以内の分割見込書」で後日適用の道がある
☑ 内縁は対象外。二次相続対策は配偶者の財産と子の人数の把握から始める

まとめ

相続税の配偶者の税額軽減(配偶者控除)は、残された配偶者が取得した遺産のうち、「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」の、いずれか多い金額までに対応する相続税を軽減してくれる、非常に手厚い制度です。遺産が1.6億円以内であれば、配偶者が全部相続しても相続税が0になり得るなど、一次相続の負担を大きく抑える力を持っています。

ただし、この制度を使うには、戸籍上の配偶者であること、原則として申告期限(10ヶ月)までに遺産分割が確定していること、そして税額が0になる場合でも相続税の申告をすること、といった要件があります。さらに、目先の税額を0にしたいからと配偶者に遺産を寄せすぎると、配偶者が亡くなる二次相続で子の相続税がかえって膨らむ、という落とし穴があることも見てきました。

💡 本記事の要点(3つ)
① 配偶者控除は「1.6億円」か「法定相続分」の多い方までが非課税の目安。強力だが、家族全体の非課税枠ではない
② 使うには戸籍上の配偶者・遺産分割の確定・相続税の申告が必要(税額0でも申告は要る)
③ 一次相続で配偶者に寄せすぎると二次相続で子の負担が増えることがあり、一次・二次通算での検討が重要

大切なのは、「配偶者は非課税だから」と一次相続だけで判断せず、二次相続まで見据えてトータルで分け方を考えることです。とくに不動産が遺産の中心を占めるご家庭では、分けにくさや売却のタイミングも絡み、判断はいっそう複雑になります。当社では、相続不動産の評価・売却の実務を通じて、提携する税理士・司法書士と連携しながら、「どう分け、いつ売るのが家族にとって良いのか」という入口の段階から無料でご相談を承っています。

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🚨 免責事項
本記事は2026年7月時点の法令・制度をもとにした一般的な情報提供であり、個別の相続税額や配偶者の税額軽減の適用可否、有利・不利を保証するものではありません。配偶者の税額軽減(配偶者控除)の適用範囲や、一次相続・二次相続を通じてどの分け方が有利になるかは、ご家庭の遺産の内容・金額・相続人の構成・配偶者ご自身の財産によって異なります。本記事の数値例は仕組みを理解するための簡略化したイメージです。具体的な税額の試算や申告手続きにあたっては、税理士・司法書士・弁護士等の専門家へ必ずご確認ください。

運営:ヘリテージリンク株式会社|東京・埼玉エリアの相続不動産・空き家の査定・売却・管理

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